【特養で働く看護師の役割と仕事内容とは?】現役特養ナースがメリットデメリットを徹底解説

私は30年近い看護師経験のなかで、病院→訪問看護→病院→デイケア→特養で勤務してきましたが、特養での勤務経験はまだ短く、医療施設と介護施設の違いに戸惑いつつも楽しく働いています。

看護師は、病院などの医療施設で働くイメージが強いかもしれませんが、実際は介護施設で働く看護師も多くいます。

しかし実際に勤めるとなると「医師がおらず看護師が少ないのは不安」「医療処置が少ないので看護スキルが落ちそう」「夜勤がないから給料が少なそう」などいろいろ考えてしまいますよね。

私自身も病院勤務で体調を崩してしまい、医療から介護の職場にキャリアチェンジしてきた経緯があります。

そのような私が、特養で働く看護師の仕事内容や給与事情、特養で働くメリット・デメリット、勤務している特養の実際などについてお伝えしていきます。

ハナ☆ハナ

介護施設にかぎらず職場には合う合わないがありますが、高齢者看護に興味があり、ゆったり働きたい看護師にはおすすめです

目次

特別養護老人ホームとは

特養の正式名称は、特別養護老人ホームです。

自治体が設置し、社会福祉法人が運営している公的施設で、介護保険を利用して入居できます。

主に要介護3以上の高齢者が長期に暮らす施設で、介護施設の中でも入居者の介護度が高いのが特徴です。

自宅での生活が困難な高齢者が、生活の場として利用しており、人生の最期の看取りまでを希望して利用する人も少なくありません。

老人福祉法において、特養は以下のように定義されています。

65歳以上の者であって、身体上又は精神上著しい障害があるために常時の介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難なものを入所させ、養護することを目的とする施設とする。

特養の入居者

・65歳以上で、要介護3~5の人
・40~64歳で、特定疾病が認められた要介護3~5の人
・特例により入居が認められた要介護1~2の人

特養は有料老人ホームなどと比べると、費用負担が軽く入所希望者も常に多い状態です。

公的サービスのため、要介護度の高い方が優先的に入所となりますが、24時間の医療ケアが必要というような医療依存度が高い方は多くありません

特養の種類

特養には大きく分けて従来型とユニット型の2種類があります。

従来型

個室は少なく、4人部屋あるいは2人部屋などの多床室がメインの施設です。

昔からある特養に多いタイプで、入居者全体をその日に勤務のスタッフ全員で介護します。

ユニット型

全室個室で、入居者10人前後を一つのユニットとしており、各ユニットに固定配置されたスタッフが介護します。

個人のプライバシーが守られる個室と、他の入居者やスタッフと交流するための居間(共同生活室)があることで、細かいケアが行き届きやすくなっています。

人員の配置基準

施設長原則専従で常勤1名 社会福祉主事、福祉経験2年以上などが要件
医師入居者に対して健康管理や療養上の指導を行うために必要な数
介護職員又は看護職員原則専従 入居者3名に対して常勤換算1名以上
生活相談員入居者100名に対して常勤1名
栄養士1名以上
機能訓練指導員1名以上 当該特養の他職種との兼務が可能
介護支援専門員入居者100名に対して1名 原則専従 当該特養他職種との兼務が可能

看護師は原則専従で、入居者が30人以下の施設では1人以上、31〜50人では2人以上、51~130人では3人以上が常勤換算で必要とされています。

特養の看護師の役割・仕事内容

特養で働く看護師に高い看護スキルが求められることはほとんどありませんが、医師が常駐していないため医療的な判断を看護師に求められる場面は多くあります。

看護師の役割

入居者の健康管理が中心ですが、長期に入居される方や要介護度の高い方が多いため、看取りや急変時の医療対応も重要な役割となります。

医療ケアを行う場面が少ないので、病院から転職した人は医療行為の少なさに驚くかもしれません。

しかし急変が起きた場合、病院では医師の判断と指示で動きますが、介護施設では看護師の判断が必要な場面が多く、責任は大きいです。

特養では24時間の看護師の配置義務がないため、基本的に看護師の夜勤はありませんが、その代わりに夜間はオンコール体制で対応する施設が一般的です。

仕事内容

病院と比べると複雑な看護業務はありません。

・健康管理(バイタルチェックや体調確認)
・医師の指示に基づいた医療行為(胃ろう管理、喀痰吸引、褥瘡処置、尿道カテーテル
 管理など)
・服薬の管理
・訪問診療時の診察介助
・入退所の対応
・受診の付き添い
・看護記録
・看取り、ターミナルケア
・オンコール対応

基本的な一日のスケジュール

私が勤務する特養のスケジュールを参考に、早出、日勤、遅出の勤務のすべての仕事内容を入れたものです。

ちなみに早出7:30~16:30、日勤8:30~17:30、遅出9:30~18:30となっています。

07:30出勤
07:45経管栄養 朝薬注入
08:00朝食介助、服薬介助
09:00夜勤介護士からの申し送り
バイタルチェック、体調確認
10:00口腔ケア、処置
11:00記録
11:30経管栄養 昼薬注入
12:00昼食介助、服薬介助
13:30バイタルチェック、体調確認
14:00口腔ケア、処置
15:00記録
16:00夜勤介護士への申し送り
17:00経管栄養 夕薬注入
17:30夕食介助、服薬介助
18:30退勤

ルーティン業務以外に、ほぼ毎日入居者の受診があり、看護師が必ず同伴するため、その間は看護師一人が不在になってしまいます。

またショートステイ利用者の入退所も毎日のようにあるため、その準備や対応が必要です。

他にも薬のセッティングや訪問診療の介助など、基本スケジュール以外にもすることが多いですが、時間外業務はほとんどありません。

特養の看護師の給料

特養で働く常勤看護師の平均年収は約427万円、看護師全体の平均年収の約480万円と比べるとかなり低くなります。

また非常勤看護師の平均時給は1500円で、地域差はありますが、1300~2000円が相場のようです。

介護施設別の平均年収・給料

特養も含めた、介護施設別の給料をみていきます。

常勤看護師の場合

スクロールできます
 正看護師
月給
正看護師
年収
准看護師
月給
准看護師
年収
特別養護老人ホーム422,652円5,071,824円382,542円4,590,504円
介護老人保健施設448,962円5,387,544円382,799円4,593,588円
有料老人ホーム
(特定施設入居者生活介護)
427,972円5,135,664円375,933円4,511,196円
グループホーム397,611円4,771,332円319,635円3,835,620円
デイサービス354,319円4,251,828円326,620円3,919,440円
看護小規模多機能型居宅介護414,406円4,972,872円354,842円4,258,104円

非常勤看護師の場合

スクロールできます
 正看護師
月給
正看護師
時給
准看護師
月給
准看護師
時給
特別養護老人ホーム375,894円2,237円349,664円2,081円
介護老人保健施設362,987円2,160円334,143円1,988円
有料老人ホーム
(特定施設入居者生活介護)
375,101円2,232円342,629円2,039円
グループホーム339,533円2,021円299,425円1,782円
デイサービス327,058円1,946円291,242円1,733円
看護小規模多機能型居宅介護347,775円2,070円292,644円1,741円

参考:厚生労働省「令和2年度介護事業経営実態調査結果」

夜勤のある老健や有料老人ホームと比べると少し低くなりますが、夜勤がないことを考えると十分な給料だと思います。

ハナ☆ハナ

地域や勤続・経験年数によっても年収・給料は変わります

特養で働くメリット・デメリット

メリット

メリット

・夜勤がなく、日勤メインで働ける
・残業が少ない
・体力的な負担が少ない
・長期的にかかわる看護ができる

ほとんどの施設で夜勤はないので、今まで夜勤をしてきた方は日中のみのシフトになることで生活リズムや体調が整います。

またルーティン業務がメインで突発的な業務が発生しにくいため、残業も少なめです。

介護業務は介護士が担ってくれるので病院と比べると体力的な負担は少なく、私のような年配の看護師でも働きやすいでしょう。

特養は平均の入居期間が約4年と長く、終のすみかとして最期まで暮らす方も多いため、入居者に長期的にかかわる看護ができます。

デメリット

デメリット

・医療施設と比べると給料が低め
・看護スキルが鈍る
・オンコールがある
・看護師が少ない職場への不安

夜勤手当がないため、給料は病院よりも低くなってしまいます。

入居者の医療依存度は低く、高度な医療処置が必要になると医療施設に移動するため、看護スキルが鈍る可能性があります。

オンコールを担当するのは月5~10回、実際に電話対応が発生するのは月2~3回、現場に行くことは月1回程度というのが一般的ですが、いつ呼び出しがあるかわからない状況をストレスに感じる人は多いでしょう。

状態の安定した入居者がほとんどですが、医師が常駐していないことや看護師の数が少ないことによる不安やプレッシャーは誰もが感じていると思います。

私の特養での働き方

私が勤務している特養について、かんたんに紹介します。

・従来型特養
・入所定員 50人 ショートステイ定員 20人
・入所者の平均年齢 87歳
・平均的な入所日数 750日
・待機者数 70人
・要介護度別入所者数 要介護1:0人 要介護2:2人 要介護3:14人 要介護4:21人
           要介護5:13人
・同法人の他サービスとして、訪問介護、訪問看護、デイサービス、ショートステイ、
 ケアハウス、グループホーム、居宅介護支援事業所、有料老人ホームなどがある

身体機能の低下よりも、認知症によって要介護度が高くなっている人が多い印象です。

ショートステイ利用の入退所はほぼ毎日のようにありますが、ほとんど同じ方が繰り返し利用しています。

経管栄養の人は5人、食事が全介助の人は7人ほどですが、朝・夕食の時間帯にはスタッフが7人いるので、介助は比較的スムーズに行えています。

特に大変なのは排泄介助で、排泄が自立している方はほぼいないため、全員トイレ誘導かおむつ交換が必要です。

入浴は月~土曜日の間で2回ずつ、大体一日あたり20人ほどの入浴介助を行っています。

基本的に看護業務と介護業務は看護師と介護士の間できっちり分業されています。

次は看護師や医療面のことについての紹介です。

・常勤3人 非常勤3人 (正看護師4人、准看護師2人)
 内のひとりは機能訓練指導員を兼務
・平均年齢 50才くらい
・早出、日勤、遅出の3パターン勤務 月~土曜日は3~4人、日曜日は2人勤務
・オンコール体制なし
・看取りは行わない
・配置医は個人病院の医師で、月2回の訪問診療あり

病院と比べると平均年齢は高めで、アラフィフの私が若手と言ってもらえます。

看取りまで行なう特養が増えている中で看取りは行わない方針をとっており、オンコール体制もないため、入居者に少しでも変化があれば早めの受診をすすめるなど、先回りの対応を徹底しています。

私が入職して驚いたのは介護士の主体性の高さで、気になることなど変化があればすぐに報告があり、急変時には素早く的確なサポートをしてくれます。

介護士のほとんどが認定特定行為業務従事者(一定の条件のもとで一部の医療行為が行える介護職のこと)で、喀痰吸引と経管栄養を行えるので、看護師がいない時間帯の吸痰にも対応が可能です。

まとめ

特養を含め介護施設では介護士が圧倒的に多く、現場の中心となって動いており、看護師は少数派の立場になります。

でも少数とはいえその責任は大きく、介護施設で働くことに躊躇する人が多い要因になっているのではないでしょうか。

体調を崩して以来体力にすっかり自信がなくなった私には、介護業務がほぼなく、残業もなく、給与もそこそこに高く、夜勤もない、という特養は働きやすい職場です。

ひとえに特養といっても、その施設それぞれに特性がありますし、人それぞれに適性や転職するタイミングがあるので、じっくり考えて選択してくださいね。

ハナ☆ハナ

高齢化社会がすすむ中、介護施設における看護師のニーズがますます高まることは確実です

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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