犬にも人間と同様にライフステージがあります。
私の愛犬は元保護犬のチワワで、お迎えしたときに既に8歳のシニア犬でしたが、現在は16歳のハイシニア犬になりました。
「年齢の割には元気で若くみえる」と周囲から言われますが、寝ていることが多い、動作が鈍くなった、白髪が増えたなど、加齢による変化を感じる場面は多くあります。
年相応によるものと理解しつつも、体調が悪くて寝てるのかも、足が痛くて動作がゆっくりなのかもしれない、と不安になってしまうこともあります。
愛犬の老いと向き合い、変化を受け入れることは正直つらいときもありますが、その変化を受け入れ寄り添いながら一緒に過ごせる時間はとても愛しくて幸せです。
今回の記事ではシニア犬に起こる心身や行動の変化、日常生活や健康維持のために気を付けたいこと、私のシニア犬との暮らしについてお伝えしたいと思います。
シニア犬とは
シニアとは日本語では「高齢者」を意味し、年齢の明確な基準はありませんが、 人間では65歳以上がシニア・高齢者に該当することが多いようです。
小型・中型犬は10歳、大型犬は8歳からシニア期
犬の年齢は人間の年齢に換算さんすると、小型犬で人間の約4倍、大型犬は約7倍といわれています。
ライフステージはパピー期・ジュニア期・成犬期・シニア期・ハイシニア期の5つの段階に分けられ、各時期に明確な線引きはありませんが、小型・中型犬は6~7歳頃、大型犬は5~6歳頃がシニア期に入る目安です。
犬種やからだのサイズ、病気の有無、生活環境なども老化に影響するので、一概に年齢だけで判断はできません。
犬の年齢の見方
犬は人間よりも早いスピードで年を重ねていきますが、年齢の見方の指標となるものがあります。
年齢の換算の仕方
犬の年齢の換算式はいろいろありますが、その一つを紹介します。
- 小型犬と中型犬=(犬の年齢+4)×4=人間年齢に換算
- 大型犬=12+(犬の年齢-1)×7=人間年齢に換算
うちワンコだと小型犬で16歳なので(16+4)×4=80になりますね
年齢早見表
手っ取り早く年齢を確認できるので、早見表も便利です。
引用元:犬種別の年齢表
犬の寿命は延びている
ペット医療技術の進歩や飼育環境の変化により、ペットの寿命は伸びています。
一般社団法人ペットフード協会によると、2022年時点で犬の全体の平均寿命は14.76歳で、2010年に比べ0.89歳プラスと伸びています。
犬の平均寿命は小・中型犬の方が大型犬よりも長い傾向がみられ、小型犬は12~15歳、中型犬はは11~15歳、大型犬は10~13歳くらいとなっています。
シニア期になると起こりやすい変化
シニア期にはどんな変化があるのかを知っておくことで、愛犬にそのような変化がみられても落ち着いて対応できます。
加齢とともに心身の機能が少しずつ衰えていきますが、たとえば寝ている時間が長くなった、散歩を嫌がるようになった、声を掛けても気付かないことがある、といったことはありませんか。
以下の視点から、シニア期に起こりやすい変化をみていきます。
- 外見でわかる変化
- 体内で起こる変化
- 行動にあらわれる変化
- 心の変化
外見でわかる変化
- 口腔内:歯石が増えた、歯が抜けた、口臭が強い
- 被毛:量が減ってきた、艶がなくなってきた、パサつきが目立つ、白髪が増えてきた
- 目:目ヤニが増えた、白く濁っている
- 皮膚:乾燥している、ハリがなくなった
口腔内の変化
唾液の分泌量や水を飲む量が減ることなどが原因で歯垢がつきやすくなり、また歯周病によって口臭や歯の喪失、食欲不振などが起きることがあります。
被毛の変化
代謝やホルモンバランスの変化により、被毛は薄くなり、艶や密度が減少する傾向がみられます。
またメラニン色素の生成の減少で、被毛の色が薄くなり白髪が増えてきますが、特に顔周りに目立つことが多いです。
目の変化
加齢により発症する核硬化症や白内障は、目が白く濁って見えるのが特徴ですが、角膜の炎症でも濁ってみえることがあります。
また涙液が減少することで、目の表面を潤し異物や細菌を洗い流す清浄作用が低下し、目ヤニが増えてしまいます。
皮膚の変化
皮膚は乾燥や弾力性の低下により脆弱になり、わずかな刺激でも傷ができたり内出血を起こしてしまいます。
被毛に覆われているため観察しにくいですが、痒がっている様子がないか、被毛をかき分けて表皮の状態をみる、触って腫れや湿疹がないかなどを日常的に確認するようにしてください。
体内で起こる変化
- 視力や聴力の低下
- 筋力や骨量の低下
- 免疫力の低下
- 基礎代謝の低下
視力や聴力の低下
水晶体の濁りや網膜の退化、白内障などの目の病気を発症すると、それらが原因となり視力低下が起きます。
視力が低下すると物の識別が困難になり、不安から行動範囲が狭くなったり、物にぶつかるリスクが高くなります。
耳は音の感知能力が弱まるため、呼びかけへの反応が鈍くなり、コミュニケーションが難しくなることがあります。
筋力や骨量の低下
運動量や代謝の低下、ホルモンバランスの変化により、筋肉量や筋力が減少し、筋肉の質も低下します。
筋力の低下により活動性の低下や、日常の動作に支障がでることがあります。
また骨の密度が減少し骨量が低下するため、関節の変形や痛み、骨折が起こりやすくなります。
免疫力の低下
体内の異物や病原体と戦う免疫システムの機能が、加齢により低下します。
免疫力の低下により感染症や疾患に対する耐性が弱くなるため、病気にかかりやすくなったり、治癒に時間がかかることがあります。
基礎代謝の低下
筋肉量が減少し体脂肪量が増加するため、基礎代謝が低下しエネルギー消費量が減少します。
その結果、太りやすくなったり、免疫力や内臓機能の低下が起こります。
行動にあらわれる変化
- 動作が鈍くなる
- トイレ回数や粗相が増える
- 睡眠時間が長くなる
- 食欲にムラがある
- 散歩を嫌がる
動作が鈍くなる
筋力や骨量、視力、聴力の低下が原因で、動作が不安定で緩慢になります。
そのため散歩を嫌がったり、歩く速度が遅くなる、階段の上り下りや段差を超える動作が不安定、といったことがみられます。
トイレ回数や粗相が増える
尿を溜める機能の低下、尿路感染症や尿結石などは、トイレ回数や粗相が増える原因になります。
またトイレまでの移動が困難になったり、認知症によりトイレの場所やタイミングを忘れてしまい、粗相する場合もあります。
睡眠時間が長くなる
体力の低下により疲れやすくなり、より多くの休息が必要となるために、睡眠時間が長くなります。
認知症によって生活リズムが乱れ、昼夜逆転や過眠がみられることもあります。
食欲にムラがある
口腔内のトラブルによって食べにくくなったり、消化機能の低下で食欲が落ちることがあります。
また動作が鈍くなるため、食欲はあっても食事に時間がかかることも考えられます。
散歩を嫌がる
筋力や体力の低下、関節の痛みなどの身体的要因以外に、外部からの刺激に対する感受性が強くなることで、寒暖や天候、車の往来、他犬・他人との接触などがストレスになり、散歩を嫌がる場合もあります。
心の変化
- 感情のコントロールが難しくなる
- 関心や興味が薄れてくる
- 飼い主への依存度が高くなる
感情のコントロールが難しくなる
脳の機能低下が原因で、感情のコントロールが難しくなったり、感情表現が鈍くなります。
怒りっぽくなった、尻尾を振らなくなった、というような変化がみられることがあり、また感覚の衰えによって不安を感じやすくなり、分離不安になるケースもみられます。
関心や興味が薄れてくる
興味があった活動や遊びに対する関心が薄れてきます。
新しいことへの好奇心や周囲の刺激に反応することも減るため、他人や他犬との交流も興味を示さず、嫌がることもあります。
飼い主への依存度が高くなる
心身や環境の変化に対する耐性の低下により不安が強くなり、飼い主に安心を求めるために依存度が高くなります。
ツンデレだったのに以上に甘えん坊になるコもいます。
シニア期に日常で気を付けたいケア
シニア食に切り替える
シニア食は年齢と健康上の変化に適応した栄養バランスになっています。
低カロリー・低脂質
運動量や代謝の低下により肥満になりやすいため、低カロリー・低脂質食で適正な体重維持ができるよう考慮されています。
1日に必要なエネルギー量は、成犬期よりも10~15%ほど少なくなります。
高タンパク質
筋肉量が減少するため、良質で適量のタンパク質を摂取することで筋肉量の維持をはかります。
関節ケア成分
グルコサミンやコンドロイチンなどの成分は、関節の柔軟性を高めたり痛みを軽減し、関節の健康をサポートします。
消化をサポート
消化機能が低下し始めるので、胃腸への負担を軽減するために、消化しやすい成分や食物繊維が含まれています。
シニア犬でも療法食を食べているコは、かかりつけの動物病院にシニア食への切り替えが必要か相談してください。
また急にシニア食に切り替えると、犬も戸惑いストレスを感じてしまうのでので、今までのフードにシニア用フードを少しずつ混ぜながら、徐々にシニア用の割合を増やして徐々に慣らしていきます。
ドライフードが食べにくいときは、お湯でふやかしたり小粒タイプのものを選ぶのもおすすめです
オーラルケアでお口の健康を守る
歯垢や歯石の蓄積を防ぐためには、犬用の歯ブラシや歯磨きシート、歯磨きペーストを使った毎日のケアが理想です。
でもお口を触られることを嫌がるコは多いので、そのような場合には無理をせず、噛むことで歯磨き効果が期待できるおやつやおもちゃを試してみてください。
噛む行為により唾液の分泌が促され、口の中の汚れを洗い流したり、細菌の繁殖を抑える効果が期待できます。
すでに歯石がたくさん付いている場合には、動物病院での歯石除去が必要になりますが、歯石除去は全身麻酔下で行われるため、シニア犬にはリスクが高くなります。
そして歯石除去をしてもその後のケアが不十分だと、また歯石が付いてしまうので自宅での継続的なケアが必要になります。
犬が受け入れやすい歯みがきグッズや、歯みがき効果のあるおやつを活用しながら、将来的には歯みがきができるように少しずつ慣らしていきましょう。
室内環境を見直す
視力や筋力の低下により、物にぶつかったり段差につまづくことがあるため、安心して過ごせる安全な生活環境が必要になります。
リラックスできる居場所をつくる
視力や聴力が低下してくると、記憶している間取りや家具の配置をもとに室内を移動するため、模様替えなどで配置を替えると、混乱してしまうので注意してください。
日当たりや通気性が良く、お気に入りの使い慣れたベッドやおもちゃがある、安心してリラックスできる場所を確保します。
トイレは居場所の近くに設置する
トイレが近くなるので、普段過ごしている居場所から移動しやすくて近い場所にトイレを設置します。粗相しても絶対に叱らず、トイレまでの移動が難しくなってきたときには、オムツの使用も検討してください。
フラットで滑らない安全な床
段差をできるだけなくして室内をバリアフリーとし、ソファに上がる場合にはステップやスロープを設置します。
滑りやすいフローリングには、コルクマットやカーペットなどの滑りにくいものを敷いてください。
快適な室温や温度の調節
体温調節機能が低下してくるので、温度や湿度の影響で体調を崩しやすくなります。
エアコンを利用して室内を快適な状態に維持しつつ、暖かい場所や涼しい場所など、自分で快適な場所を選び移動できるように、犬が過ごすスペースにはある程度のゆとりをもたせることが必要です。
事故やケガをしないために、危険なものは置かない
視力低下により、今までは避けることができていた柱や家具の角などにぶつかることがあります。
危険な物は犬の行動範囲から移動し、移動が難しいものは緩衝材などを巻いて、ぶつかってもケガをしないように保護します。
コード類は脚を引っ掛けやすく、また噛んだ場合に感電の危険もあるため、配線場所を十分注意してください。
散歩と運動で刺激をもたらす
散歩を嫌がったり、寝ている時間が長くなるシニア犬は多いですが、運動量が減ることで老化を早めてしまう可能性があります。
運動は筋力維持だけでなく、脳が活性化されて認知症の防止にもなるため、できるかぎり散歩などの運動の継続は必要です。
外出による他人や他犬との接触、車の往来などは犬のストレスになりやすいので、飼い主がそれらを回避できるよう配慮してあげてください。
半年に1回、健康診断を受ける
7歳以上になったら、半年に1回はかかりつけの動物病院で健康診断を受けることが推奨されており、ドッグドックなどの健康診断を行っている動物病院も多いので、かかりつけの動物病院で相談してみましょう。
人間と同様に病気は早期発見・早期治療が大事なので、普段から食事量や排泄の状態、元気の有無や動きなどをしっかり確認し、変化があればすぐに受診してください。
検査しないとわからないデータがある一方、いつも一緒に過ごしている飼い主にしかわからないデータもたくさんあります。
・体重
・食事量、水分量
・尿・便の量や回数、性状
これらの項目を毎日チェックすることで、変化に早く気付くことができ、かかりつけ医が診断するときの判断材料にもなります。
家ではしんどそうだったのに、動物病院に連れて行くとその素振りをみせないコもいるので、スマホで家での様子を動画撮影しておき、診察時にみせるのも有効です。
わが家のシニア犬との暮らし
うちのワンコは8歳のときに保護団体からお迎えし、現在は16歳のハイシニアのおばあちゃんワンコです。
3年程前から肝機能障害で内服治療を続けていますが、病状については横ばい状態で、月1回の診察と血液検査を継続しています。
毎日みていると変化を感じませんが、以前の写真と比べるとお顔の毛が白くなり、目元や口元も垂れてきて、おばあちゃんのお顔になってきました。
艶々だった被毛はパサつきが目立ち始め、お口の中は歯石が目立ち、臭いも気になります。
自宅でのブラッシングや歯磨きのケアを続けていますが、年々嫌がるようになってしまい、現在は定期的に通っている動物病院やトリミングサロンに助けてもらいながらケアを頑張っています。
もともと活動的なコではありませんでしたが、最近はほとんど寝ており、たまにスイッチが入ったように家の中を走り回ったり、ベッドで穴掘り作業に励んでいますが、本当に活動量は少なくなってしまいました。
散歩は嫌がるので、スリングに入れて外出したり、誰もいない時間を見計らって近所のドッグランに行くなど、ストレスにならない程度に刺激をあたえるようにしています。
シニアの頃から食は細く、ハイシニアの今はさらに食べなくなってしまい、体重は減る一方で骨格も目立つようになってきました。
血液検査では栄養状態の数値は良いのですが、やはり心配です。
フードはシニア食ではなく療法食ですが、それだけだと極少量しか食べないので、動物病院で許可をもらって嗜好性の高い補助食品も食べています。
わが家は狭い1LDKですが、その半分以上がワンコの自由スペースになっていて、キッチンと洗面所以外では好きなようにくつろいでいます。
狭い家だと物理的にワンコとの距離が近くなるのがうれしいですね。
心配事としては、以前は興味を示さなかったコード類を噛んだり、ゴミ箱を漁るようになったことです。
もちろん触ることができないように対策をしていますが、今までなかった行為がみられることに「認知症の初期症状かも?」と心配しています。
加齢による変化を感じると少し寂しいけれど、穏やかな今の姿も愛しく、いつまでも元気で長生きしてほしいです
おわりに
シニア犬ときくと、少しネガティブな印象をもたれるかもしれませんが、ペット寿命が伸びた今はシニア世代でも元気なコがいっぱいいます。
やんちゃだったワンコがシニア期になると落ち着き、寝てることが多くなり寂しさを感じることもありますが、飼い主のことが大好きで頼りにしていることは変わりません。
シニア期では外見上の変化はわかりやすいですが、内面的な変化は知っていないと気付けないことが多いので、意識して観察してあげてください。
健康寿命が長い元気なシニア犬になるためには、現在はもちろん今までの生活習慣が大きく影響するので日々のケアが大事です。
そして飼い主だけでは難しいことは、周りの人や専門家に助けてもらうことも必要です。
みなさんの愛犬がシニアになってもハイシニアになっても、元気で愛され幸せであることを願っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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