かつては定年退職が当然でしたが、最近は早期退職を選ぶ人が多くなっています。
- 賃金が上がらない
- 終身雇用制度が崩壊しつつある
- 働き方の選択肢が増えている
これらの社会的背景により、投資や副業などの給与所得以外の資産形成に取り組む人が増えており、またセミリタイアやアーリーリタイアというライフスタイルを選ぶきっかけにもなっています。
セミリタイアとは「まとまった貯蓄をしたうえで、パートや投資などで一定の収入を得ながら暮らす」ことで、似た言葉のアーリーリタイア(早期リタイア)は「働かなくても生活できる資産を得たうえで早期退職する」ことです。
アーリーリタイアは働かなくても生活できるレベルの資産が必要なので、選択できる人は限られてしまいます。
しかしセミリタイアは一定の収入を得ながら生活するので、アーリーリタイアに比べると少ない資金でも実現することが可能です。
アーリーリタイアは資産を切り崩しながら仕事をせずに生活しますが、セミリタイアは仕事に追われない程度に生活費を稼ぎながら生活します
パートナーや子どもがいない独身女性は、セミリタイアへのハードルが低いというメリットがあります。
家族の都合を考えたり同意を得る必要がなく、自分の暮らしだけを考えて自分の判断でセミリタイアを目指すことができ、扶養する家族がいないので経済的な負担も少ないでしょう。
とはいえ、セミリタイア時に必要な資産はその人の生活費やセミリタイア後の収入によっても大きく異なります。
この記事では、セミリタイアに必要な資金づくりや失敗しないための対策、アラフィフ独身女性である私のリアルなセミリタイア計画などについてお伝えします。
50代独身女性がセミリタイアするために必要なお金
セミリタイアを実現するためは、お金がいくら必要なのでしょうか?
以下の計算式に当てはめて考えてみましょう。
(毎月の生活費-毎月の収入)×12ヵ月×(平均寿命-セミリタイア時の年齢)
たとえば現在50歳でパート勤務を65歳まで続け、以降は働かずに年金を受給するとした場合に必要なお金はいくらになるのか、以下の設定で計算してみましょう。
- 毎月の生活費:17万円
- 65歳までの毎月の収入(パート収入):15万
- 65歳以降の毎月の収入(年金収入):13万円
- 日本人女性の平均寿命:87歳
- セミリタイア時の年齢:50歳
その結果、50歳時点でセミリタイアを実現するのに必要なお金は1,416万円になりました。
もし50歳以降は働かずに収入もゼロの場合(実際には年金収入があります)に必要なお金は7,548万円になるので、大きな差が生じます。
セミリタイアは働くことが前提なので、達成へのハードルが低いことが、この結果から分かります
あくまで試算なので、想定外の支出に備えて多めにお金を準備しておくと安心です。
生活費
2022年の「家計調査 家計収支編 単身世帯」における35~59歳が対象のデータでは、単身世帯の平均的な消費支出(生活費)は186,503円になっています。
ちなみに男性と女性の平均を比較すると、男性は184,305円、女性は190,059円で、女性の方が少し高めです。
消費支出の主な項目と金額については以下のとおりです。
支出項目 | 金額 |
食料 | 42,899円 |
光熱・水道 | 12,352円 |
家具・家事用品 | 5,359円 |
被服及び履物 | 5,722円 |
保健医療 | 7,150円 |
交通・通信 | 24,621円 |
教養・娯楽 | 19,790円 |
交際 | 11,854円 |
住居 | 30,966円 |
厚生労働省の統計では、女性の方が男性より生涯医療費が高く、50代になると女性は更年期や生活習慣病の影響もあり、年間の医療費が20万円を超える傾向がみられています。
また女性は交際費や理美容費、衣服費などの支出が男性よりもが多くなりがちです。
生活費はライフスタイルによっても異なるので、生活満足度が下がらない範囲で定期的に見直していきましょう。
私は「食費にはお金をかけても良い」というマイルールを決め、その代わりに他の部分を節約しています
社会保険や税金の支払い
セミリタイア後の働き方によって、社会保険に加入できる場合とできない場合があります。
加入条件は労働時間や賃金、従業員数などにより異なりますので、詳細は「厚生労働省・日本年金機構:社会保険(厚生年金保険・健康保険)への加入手続はお済ですか?」を参照ください。
社会保険に加入しない場合、国民健康保険、国民年金、介護保険の支払いは自分で行うことになります。
給与天引きになっていることが多い健康保険や年金、介護保険、住民税の支払いは、自分で行うようになると金額の大きさに驚きます
支出は生活費に注目しがちですが、社会保険や税金などの固定費も大きな割合を占めています。
国民年金保険料は原則、20歳~60歳までの40年間支払いますが、任意加入で65歳まで支払い続けることが可能です。
会社員や公務員などで厚生年金に加入する場合は、70歳まで保険料を支払います。
保険料を支払う期間が長いほど、受給額も多くなります。
セミリタイア後に収入を得る方法
セミリタイアは「まとまった貯蓄をしたうえで、パートや投資などで一定の収入を得ながら暮らす」ので、働くことを前提としています。
貯蓄や投資から得られる利益などの資産状況によって働き方は違ってきますが、基本的には気楽に働けるストレスの少ない仕事を選びます。
心身のストレスからの解放や時間の自由を求めてセミリタイアしたのに、結局仕事ばかりしていては意味がありません
セミリタイア後は、最低限の仕事と投資などの不労所得で収入を得ることが一般的でしょう。
投資で稼ぐ
投資には投資信託や株式、債券、不動産、金、FX、仮想通貨など多くの種類がありますが、初心者におすすめする投資は、投資信託と株式投資です。
まずは非課税特典のあるNISAやiDeCoから始めてみましょう
不動産やFX、仮想通貨などは投資初心者にはリスクが高いと思われます。
セミリタイアでは資金に余裕があるわけではないので、資金を失うリスクが大きい投資は避けるべきです。
投資信託
投資信託とは「ファンド」ともいわれ、複数の投資家から集めたお金を資金として、投資家の代わりに運用の専門家(ファンドマネジャー)が株式や債券などに投資・運用する金融商品です。
その運用から得られた利益は、投資家それぞれの投資額に応じて分配されます。
自分で考えて株式や債券を購入することが難しい人でも、少ない資金から始めることができ、運用は専門家にお任せなので、投資の手間や時間もかからず初心者にはおすすめです。
元本は保証されないので損失が発生するリスクがあり、また購入先によって手数料が異なるため、購入前の比較検討が大切です
iDeCo
iDeCoは「個人型確定拠出年金」といい、毎月の積み立て金(拠出金)を運用し、将来のために備える私的年金制度です。
運用益が非課税となり、掛け金は所得控除の対象になるため、高い節税効果があります。
原則として60歳以降に一括か分割で受け取り、拠出金には課税されますが、公的年金等控除や退職所得控除の対象になるので税制優遇を受けられます。
新しいNISA
NISAは「少額投資非課税制度」といい、2023年までは一般NISAとつみたてNISAの2種類がありましたが、2024年1月より神改正と言われる新しいNISAへ移行しました。
- 非課税保有期間の無期限化
- 口座開設期間の恒久化
- つみたて投資枠と、成長投資枠の併用が可能
- 年間投資枠の拡大(つみたて投資枠:年間120万円、成長投資枠:年間240万円、合計最大年間360万円まで投資が可能)
- 非課税保有限度額は、全体で1,800万円。(成長投資枠は、1,200万円。また、枠の再利用が可能)
参考:新しいNISA:金融庁
NISAは途中で解約して引き出すことが可能なので、急にお金が必要になったときでも安心です。
株式投資
株式投資は株式の売却益(キャピタルゲイン)と、配当と株式優待(インカムゲイン)を利用できることがメリットです。
配当金で資産を増やすことはできますが、より多くの資産形成を目指すなら株式を売却して利益を得る必要があります。
最近は高配当株という配当利回りが高い株式を保有し、安定的なキャッシュフローを得る人が増えています。
高配当株は配当金をもらうことが目的なので、株は売却せずに保有し続けることが基本です
働いて稼ぐ
生活費などの必要最低限の資金を稼げれば良いので、ストレスを感じない程度にゆるく働くことが大切です。
会社員時代のようなしんどい仕事や人間関係ではなく、自分の好きな仕事やストレスではない範囲の人間関係の中で働くようにしましょう。
働くことで人や社会とのつながりを維持できるため、精神的な安心につながるメリットがあります
セミリタイアに失敗する理由
- 資金が不足する
- 生活がマンネリ化し、社会とのつながりが減る
- 社会的信用がなくなる
- 生活状況が変わる
事前にしっかり準備をしてセミリタイアしたものの、途中で挫折してしまう人は少なくありません。
いちばんの原因は資金不足ですが、会社員という肩書きがなくなることで、社会とのつながりや信用を保つこと難しくなり、セミリタイア生活に不安を感じてしまう場合があります。
資金が不足する
セミリタイア時の想定より支出が多くなったり、収入が少なくなると資金が不足してしまいます。
国民年金の受給額は減る一方なので、セミリタイア時には想定よりさらに少ない可能性が高いでしょう。
厚生年金保険に加入していても、給与所得が減ると支払う厚生年金保険料も減り、結果的にもらえる年金受給額も減ります。
つまり早い年齢でセミリタイアするほど、年金受給額は少なくなってしまうのです
また投資で大きな損失を出した場合にも、資金が一気に減る可能性があります。
生活がマンネリ化し、社会とのつながりが減る
セミリタイアしてしばらくは、会社員生活から解放され自由を満喫していても、単調な生活が段々と退屈になる人もいます。
会社というコミュニティがなくなることで社会的つながりも減少します。
まだ働いている同世代の友人と、自由な時間が増えた自分のあいだに生活や考え方のずれが生じ、すれ違いが増え、関係が疎遠になってしまうかもしれません。
社会的信用がなくなる
会社員でなくなると社会的信用を失い、以下のようなことが起こる可能性があります。
- クレジットカードをつくれない
- 賃貸住宅の契約ができない
- ローンが組めない
- 民間保険に加入できない
セミリタイアという選択肢を好意的に受け止めてくれる人ばかりではありません。
「まだ働ける年齢なのに仕事を辞めるなんて怠けてる」「独身で自由の身だからできること」「お金に余裕がある人はいいね」など嫌味や妬みを言われることは覚悟しておくことが必要です。
生活状況が変わる
アラフィフ世代では親の介護が必要になる可能性が高くなります。
介護は時間もお金もかかるため「施設に入る資金がないので在宅で介護する」「介護サービスを利用する資金が足りないのでお金を援助する」という状況になると、セミリタイア生活の継続が難しくなるかもしれません。
自分自身も今は健康でも、生活習慣病や更年期障害に罹り、治療が必要になったり働けなくなる可能性もあります
セミリタイアに失敗しないための対策
- 身の丈に合った生活をする
- 会社以外のコミュニティをもつ
- 会社員の方が有利なことはセミリタイア前にしておく
- 想定外の支出に対応できる資金を準備しておく
もしセミリタイアに失敗して再び働くことになった場合、50代では条件の良い再就職は難しくなります。
そのような事態にならないためにも、できる対策は事前にしっかり行いましょう。
身の丈に合った生活をする
ひたすら節約していては虚しいだけで、セミリタイア生活を楽しむことができません。
贅沢になり過ぎない程度に、ときには浪費を楽しむことは幸福感につながります。
セミリタイア前の生活費を逸脱することなく、身の丈に合った生活を心掛けましょう。
会社以外のコミュニティをもつ
会社中心の生活の人は、会社以外に自分の居場所がないことがあります。
たとえばセミリタイアを目指す人が集まるコミュニティに参加することで、セミリタイアに関する知識を得たり、情報収集や共有の機会になります。
同じ目的に向かっている人と交流することはモチベーションのアップにもつながるでしょう。
趣味や推し活など興味のある分野のコミュニティであれば、気の合う仲間が見つかりやすいですよ
会社員の方が有利なことはセミリタイア前にしておく
以下のことは、会社員のあいだにしておく方が無難です。
- クレジットカードをつくる
- 賃貸住宅への引っ越し
- 民間保険の加入
しかし必要がないのに「心配だからしておこう」はやめましょう。
不安になって余計な支出を増やしていては本末転倒です。
想定外の支出に対応できる資金を準備しておく
最初に述べた「50代独身女性がセミリタイア後に必要なお金」は最低限必要な資金なので、そこにプラスした予備資金があれば、想定外の支出があってもセミリタイア生活の継続が可能です。
緊急の予備資金は生活費の3ヵ月~6ヵ月分程度が目安とされており、35~59歳の単身世帯の女性の平均的な消費支出(生活費)は約19万なので、約57~114万円が必要になります。
私のセミリタイア計画
私のようなアラフィフ独身女性がセミリタイアを目指すというと、ポジティブな要素よりネガティブな要素が出てきがちです。
しかし以下のようなポジティブ要素も(少なくとも私には)あります。
私がもっている、セミリタイアするために有利な条件
- 失敗しても困るのは自分だけ
- ある程度の蓄財がある
- 資産を残す必要がない
- 失敗してもとりあえず働く術がある
50歳を目前にセミリタイアを目指す私には、独身で子どもがいないことや長年の看護師としての経験などの強みがあります。
失敗しても困るのは自分だけ
もしセミリタイアに失敗しても、おひとりさまなので迷惑をかける家族がおらず、あくまで自己責任となります。
失敗したくはないですが、誰かを巻き込む心配がないのはとても気が楽です。
ある程度の蓄財がある
もともと物欲が少なく、今までお金を多く費やしたのはペットと旅行、実家の購入費の援助くらいで借金はありません。
生活費とペットに関する費用以外は大きな支出がなく、また看護師という仕事柄、収入が安定しているので蓄財はある方だと思います。
何かトラブルが起きないかぎりは、セミリタイアまでに老後2,000万円問題はクリアできそうです。
資産を残す必要がない
子どもがいれば資産を残してやりたいと思うかもしれませんが、私には子どもがいないので資産を残す必要はありません。
贅沢をするつもりはありませんが、自分の好きなようにお金を使えるのは精神的に気楽です
自分が亡くなるときに残った資産はすべて、動物保護に貢献してくれている団体に寄付することに決めています。
失敗してもとりあえず働く術がある
もしセミリタイアに失敗しても「看護師免許があれば働くことができる」というのは大きな強みです。
看護師は50代でも就職先が豊富なので、再び働いて収入を得てから、もう一度セミリタイアを目指すことも可能です。
50歳までに具体的な計画を立て、50歳からセミリタイア生活をスタートする
今後の私のセミリタイア計画は、次のように考えています。
- 2,000万円以上の資金を貯める
- iDeCoと新しいNISAの活用
- 少額から高配当株投資に挑戦
- パートは現在の勤務条件で継続
2,000万円以上の資金を貯める
私がセミリタイア以降に平均寿命の87歳まで生きると仮定すると、2,000万円以上の資金があり、現在と同レベルの支出内で生活できれば、亡くなるまでの間にお金が不足することはないはずです。
iDeCoと新しいNISAの活用
現在はiDeCoとつみたてNISAを満額まで投資していますが、始めたのが2022年からなので、まだ投資期間は短いです。
すべてインデックスファンドに投資しているので、長期間の運用による利益が期待できます。
新しいNISAの非課税保有額1,800万円まで投資するのは難しいですが、将来の資金をかなり増やせることは確実です
少額から高配当株投資に挑戦
高配当株投資は株式投資の中では低リスクといわれますが、投資である以上、絶対に損失が出ずに確実に利益を得る保証はありません。
私は株式投資で月3万円の配当金を目指したいと考えていますが、株式投資はまったくの初心者で知識もないため、まずは勉強からのスタートです。
新NISAの成長投資枠で購入できる米国高配当ETFが気になっています
パートは現在の勤務条件で継続
現在は特養でパート看護師として、1日8時間、月に16日勤務しています。
手取り年収は約300万円で余裕のある家計とはいえませんが、体調を考慮すると現在の働き方がベストなので、このままの勤務条件を継続するつもりです。
現在の収入と支出を維持できれば、50歳でセミリタイアは可能な計算です。
まとめ:アラフィフ独身女性はセミリタイアへのハードルが低い!
セミリタイアとは「まとまった貯蓄をしたうえで、パートや投資などで一定の収入を得ながら暮らす」ことです。
それを実現するためには、以下の3点が大切です。
- セミリタイア後に必要なお金を知る
- セミリタイア後も収入を得る
- セミリタイアに失敗する理由を知り、対策を考えておく
パートナーや子どもがいないアラフィフ独身女性は、セミリタイアへのハードルが低いというメリットがあります。
しかしハードルが低いとはいえ、セミリタイアに失敗しないための事前準備は入念に行ってください。
これからも50歳でセミリタイアを目指す私の取り組みや経過について、ブログでお伝えしていきたいと思っています
資産形成の勉強について独学では難しいと感じている人には、お金の専門家から直接学べるマネーセミナーの活用がおすすめです。
以下の記事もぜひご覧くださいね。
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