パート看護師には育児や介護、体調面の不安などの理由から、時間の余裕やしんどくない働き方を求めている人が多いでしょう。
しかしパート看護師の勤務時間が短いことや、責任業務が少ないことに対して、正職員の看護師からの風当たりがきつかったり、職場によっては正職員並みの仕事内容や責任を求められる場合もあります。
思っていた以上に忙しくて残業が増えてしまい、仕事と家庭の両立が難しくなるケースも少なくありません。
自分が望む働き方ができず、人間関係にも悩まされがちになり「パートを辞めたい」と考えるようになってしまいます
辞めるべきか、辞めずに様子をみた方が良いのかについては慎重な見極めが必要ですが、心身に不調をきたしている場合はすみやかに辞めるべきでしょう。
この記事では、パートを辞めたいと思ったときの対処法や円満な退職の方法、転職を成功させるためのコツについても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
パート看護師が辞めたいと思う理由
2022年看護職員の労働実態調査によると、働いている看護師の約8割は仕事を辞めたいと考えています。
- 人手不足で仕事がきつい
- 賃金が安い
- 職場の人間関係が悪い
辞めたい主な理由には、このような看護師の多くに共通したものもあれば、パートならではの理由もあるでしょう。
「パートは正職員に比べると気楽に働ける」と思われがちですが、パートゆえの悩みがあり、パートであっても辞めたい人は多くいます。
ではパート看護師が辞めたいと思う理由とは、どのようなことでしょうか。
- 人間関係で悩む
- 想定以上に忙しくて残業が多い
- 正社員並みの責任を求められる
- 仕事と家庭の両立が難しい
- 看護スキルに自信がない
人間関係で悩む
看護師は仕事の忙しさや責任の重さからストレスを抱えやすい職業ですが、職場の人間関係が悪いとさらにストレスが大きくなってしまいます。
一般的に看護師には気が強い人が多く、職場に怒りっぽい人や威圧的な人がいると、気の優しい人は萎縮してしまい平常心で仕事ができなくなってしまいます。
スタッフ同士が仲良しではなくても、仕事をするうえでストレスなくコミュニケーションが取れる関係であることが必要です。
また「パート看護師は責任の少ない、楽な仕事しかしない」と正職員から疎まれがちで、肩身の狭い思いをすることがあります。
退職理由として人間関係は常に上位にあげられます
想定以上に忙しくて残業が多い
「パートなら定時に帰れる」と考えてパート勤務を選んだ人は多いでしょう。
しかし勤めてみると想像以上に忙しく、正職員だけでは業務が回らずパートにもしわ寄せがきてしまい、結果的に残業が多くなってしまう場合があります。
子どものお迎えなど仕事の後に用事があるため残業できないときには、後ろめたさを感じてしまうかもしれません。
パートは時給で働いているので、勤務時間については正職員以上にシビアになってしまいます。
残業代がきちんと支払われるならまだマシですが、暗にサービス残業を強いるような職場なら問題です。
正社員並みの責任を求められる
パートのメリットのひとつは責任業務が少ないことであり、これは勤務時間が少ないことを考えればやむを得ないことです。
その代わりに給与や福利厚生などの待遇面で正社員には劣ってしまいます。
しかし人手不足を理由にパートでも正職員と同様の業務を求められることがあり、仕事ができるパート看護師であれば任される業務がどんどん増えてしまう可能性もあります。
看護師である以上、患者に対する責任は正職員もパートも同じですが、管理業務などの責任業務まで負う必要はありません。
パートと正職員の線引きが曖昧になっている職場が多くあります
仕事と家庭の両立が難しい
家庭と仕事とのバランスを考えてパートを選んだのに、仕事が忙し過ぎて両立ができなくなっては本末転倒です。
一時的に忙しいならまだしも常に忙しく人手が足りていない職場では、家庭よりも仕事にかかる比重が大きくなりかねません。
「どんなに忙しくても、たとえ仕事が残っていても、あとは任せて定時になれば帰る」という強い意志をもって働けたら良いですが、残った仕事に追われている正職員を横目に先に帰るのは心苦しいものです。
仕事と家庭の両立を目指すなら、時間にゆとりがあって忙しくない職場を選びましょう。
看護スキルに自信がない
ブランク後の復職や看護師経験が少ない場合、看護スキルに自信がもてず不安になるかもしれません。
一定レベルのスキルを求められる職場であれば、できないことを指導してもらう必要があり、申し訳なさや働きづらささを感じるでしょう。
優しく指導してくれると良いですが「使えない人」と思われ、冷遇されるような職場では心が折れてしまいます。
パート看護師に時間をかけて丁寧に指導してくれる職場は少ないので、自分の能力以上を求められる職場は最初から避けておきましょう。
自分のこれまでの経験が活かせる職場がおすすめです
辞めたいと思ったときの対処法
働いていれば「辞めたい」と思うことは少なくありませんが、その度に辞めていたらキリがないので、誰もが多少は我慢をしながら仕事を続けています。
しかし自分で解決できないことは、信頼できる同僚や上司に相談し、悩みを長引かせないようにしましょう。
我慢して働き続けると心身が壊れてしまい、ダメージが大きい場合には今後の看護師人生に悪影響をもたらしかねません。
ではパート看護師が辞めたいと思う理由ごとに対処法を見ていきます。
人間関係で辞めたいとき
就職したてなど、まだ同僚の人間性が分からないあいだは、同僚への相談は控えましょう。
最初は気さくで良い人と思っていた人が、実は腹黒い人だったというのは意外とありがちです
人間関係の悩みを相談すると人によっては悪口と誤解され「〇〇さんの文句を言っていた」などと告げ口されると、ますます人間関係に悩むことになってしまいます。
このような誤解を招くことがないように「この人なら大丈夫」と確信できる人にだけ相談してください。
しかし人間関係の問題は根本的な解決が難しいため、上司に相談しても異動など距離をおくことで済まされてしまう場合が少なくありません。
忙し過ぎて辞めたいとき
パートであっても忙しいことはありますが、忙し過ぎる場合には残業になったり、体調を崩すなどの問題が生じてしまいます。
パートで働く人の多くは、時間にゆとりをもって働きたいと考えてこの勤務形態を選んでいるはずです。
求人票には残業なしと記載されていたのに実際は残業だらけ…というのもありがちです。
忙し過ぎない働き方をするためには、雇用条件の見直しや異動、場合によっては転職を考える必要があるでしょう。
仕事内容に不満があり辞めたいとき
パートなのに正職員と同様、ときにはそれ以上の仕事内容や、リーダーのような責任業務を求められると、不満を感じ精神的にも大きな負担になります。
仕事ができるパート看護師だと信頼も厚く、責任のある仕事を任されやすくなります
仕事内容については就職前にきちんと確認しておく必要がありますが、あれこれ聞くと就職に不利になるのではないかと考えてしまい、確認が不十分になりがちです。
とはいえ就職してみないと分からないことも多いので、仕事内容に不満があるときは、まず上司に相談してください。
納得がいかない仕事内容を引き受け続けてはいけません。
家庭を優先するために辞めたいとき
仕事が忙しいと、帰宅後はぐったりで家事をする気にならない、という状況に陥りがちです。
家庭を大事にしたくてパートを選んだのに、仕事と家庭のバランスが保てないようでは仕事を続けることが難しくなります。
忙しくない部署への異動や勤務時間の調整が必要かもしれませんが、パートにとって勤務時間が減ることは収入減に直結するため慎重に考えましょう。
働き方について家族と話し合うことが大切です
看護スキルに自信がなくて辞めたいとき
看護師経験が浅い、ブランクがある、経験のない診療科に配属された場合などは、知識やスキルが未熟で仕事についていけず、辞めたくなるかもしれません。
求人票には「看護師経験が浅い方にも丁寧に指導します」と書かれていても、実際のところ正職員ならまだしもパートの指導に時間や手間をかけてくれる職場は少なく、即戦力として期待される場合がほとんどです。
看護スキルに自信がないなら、まずは経験がある分野や高いスキルを求められない職場を選ぶことが重要です。
今の職場で求められるスキルが高すぎて辞めたいなら、自分のスキルで対応できる部署への異動を上司に相談したり、転職を考える必要があるでしょう。
辞めた方が良いケース
辞めたいと思っていても、勢いで辞めてしまってはダメです。
上司に怒られたり理不尽なことを言われたときに、感情的になって「辞めます!」と言ってしまい、後には引けずに退職した人を何人も見てきました。
その場の感情に左右されて行動してしまう人は、今後も同じことを繰り返してしまいます。
辞めたいと思ったときには、まずはワンクッションおいて冷静になり、本当に辞めたいのか自問自答しましょう。
しかし職場に留まり続けることにデメリットしかなく、心身を壊しかねないのですぐに辞めた方が良いケースもあります。
いじめやハラスメントにより心身に不調をきたしている
看護師が働く職場は以下のような要因から、いじめやハラスメントが起きやすい環境といえます。
- 閉鎖的で外部からみえにくい
- 仕事が忙しく気持ちに余裕がない
- 女性が多く陰湿になりやすい
- 責任が大きくストレスを抱えやすい
パートは責任業務や残業が免除されることが多いため、正職員から「楽をしている」と心無い言われ方をしたり、いじめやパワハラの対象にがちです。
パートが少ない職場だと、さらに立場が弱くなりやすいです
心身を壊してしまうと今後働くことが難しくなり、看護師人生に大きなダメージとなる可能性があります。
上司や職場との価値観が合わない
自分の価値観とあまりにも合わない職場は、いずれしんどくなり働きづらくなります。
上司と合わずついていけないと思っても、異動や退職でもない限り上司は変わらないし、変わったとしても次に来る上司と自分が合うという保証はありません。
すべての職員が同じ価値観をもって働くことは難しいので、自分なりの妥協点をみつけ、どこまで折り合いをつけられるかがポイントになります。
各施設に掲げられている「理念」「基本方針」はその施設の価値観や目指す方向性が示されているので、転職を検討するなら確認しておきましょう。
問題点が改善される見込みがない
100%完璧な職場はありませんが、問題点だらけの職場はダメです。
いじめやパワハラがあっても見て見ぬふりをするような職場では、これから先も問題の解決は望めず、いずれ心を病んでしまいます。
サービス残業が常態化し、離職率が高く常に人手不足の状態の職場も問題です
職員からの意見をすべてきき入れることは無理でも、問題改善への取り組みは必要であり、それができない職場に将来性はないでしょう。
様子をみた方が良いケース
退職の手続きや転職活動は面倒でストレスもかかるため、今の職場を辞めたいと思いつつも迷っている人は多いでしょう。
次の職場が今より働きやすい職場である保証はなく、できるなら辞めずに働き続けるに越したことはありません。
転職を繰り返していると採用側の心証が悪くなり、転職に不利になる可能性もあるので、辞めるかについては慎重に検討してください。
では辞めずに様子をみた方が良いケースについて見ていきましょう。
転職を繰り返している
転職を繰り返していると、たとえ正当な理由があって辞めていても「何か問題がある人なのでは」と疑念をもたれてしまいます。
- 採用してもすぐに辞めるかもしれない
- 人間関係でトラブルを起こすのではないか
- 看護スキルが未熟そう
採用側はこのように考え、転職が不利になる可能性があります。
転職を考えるときには、なぜ転職を繰り返しているのかを自己分析することから始めましょう。
自己分析するのが難しいときは、転職サイトを利用するとコンサルタントにサポートしてもらえます
感情的になり冷静な判断ができない
働いていれば「辞めたい」と思うときは必ずありますが、感情的になって勢いで辞めることは絶対に避けましょう。
勢いとはいえ退職の意思を伝えた後にそれを取り消すのは難しく、たとえ留まることになっても気まずさが残るため働きづらくなります。
そして慌てて次の職場を探すことになると、十分な情報収集ができないままに焦って職場を選んでしまい、結果的にまた辞めることになる可能性があります。
冷静な判断ができない状況で退職の意思を伝えてはいけません。
自分に向いていないと思っている
- 希望していない部署に配属された
- 仕事がなかなか覚えられない
- 上司に叱責された
このような状況では、不安で自信喪失してしまい辞めたくなるでしょう。
しかし働き始めたばかりで、まだ仕事に慣れていないのであれば、多少ツラくても働き続けるべきです。
最初は上司の目も厳しく注意を受けることも多いですが、看護師は責任が重い仕事である以上、厳しさはやむを得ない部分もあります。
時間とともに仕事に慣れてくれば、そのような思いも軽減されるはずです。
円満な退職の方法
退職の意向を伝えると必ず理由をきかれますが、理由によっては改善案を提示されるなど、引き止められる可能性があります。
しかし引き止めに対して少しでも耳を傾けると「残ってくれるかもしれない」と相手に思わせてしまい、退職交渉を長引かせる原因になりかねません。
退職の意思が確固たるものであれば、円満に退職できるようにしっかり前準備をしておきましょう。
退職後に研修の場などで元同僚とバッタリ再会することもあるので、しこりの残るような辞め方は避けたいものです。
退職の1ヶ月前までに直属の上司に意向を伝える
法律上は退職日の14日前までに退職の意向を伝えれば問題ありませんが、引継ぎやシフト組みを考えれば、遅くても1ヶ月までには伝えておくのが望ましいでしょう。
就業規則に退職に関する内容の記載があるので必ず確認してください
「パートだから辞めても職場はそれほど困らないでしょ」と安易に考えず、正職員と同様にきちんと段階を踏むことが大切です。
親しい同僚などに退職の意向を話してしまい、自分が伝える前にその情報が上司の耳に入ると上司に不快感を与えてしまいます。
退職の意思は直属の上司にいちばん最初に伝えてください。
ポジティブな退職理由を伝える
退職にあたり、職場に対して言いたい不満はあるでしょうが「どうせ辞めるんだから言いたいことを言ってから辞めてやる!」と不満を正直に伝えるのはやめてください。
言いたい放題言ってしまうと、働く日数が残りわずかであっても働きづらくなりますし、退職後に元同僚に会ったときに気まずい思いをしてしまいます。
嘘は良くありませんが「キャリアアップのため」などポジティブな退職理由にしておく方が無難でしょう。
育児や介護、体調不良なども引き留められにくい退職理由です
引き留めにあわないためには、退職理由と退職の意思をしっかりと示すことが重要です。
退職前に転職先を決めておく
転職先が決まっていれば、退職の意思が本気であることが伝わるので、引き止められる可能性は低いでしょう。
もし転職先が決まっていなければ、好条件を提示されて引き留めにあうかもしれず、退職の意思に迷いが生じるかもしれません。
しかしその好条件が守られる保証はなく、一度でも退職の意向を示したという事実はわだかまりを残してしまいます。
転職先を決めておくことで自分自身の迷いを捨てることができ、せっかく内定をくれた転職先に迷惑をかけてしまうこともありません。
転職を成功させるためのコツを紹介
退職する意思が固まったら早めに転職活動を始めましょう。
転職先が決まっている方が引き止められにくいだけでなく、自分自身も安心なので気持ちにゆとりができます。
転職活動に失敗しないためには希望条件を明確にし、転職先についてしっかりリサーチすることがポイントです。
転職サイトを活用すれば、専門家のアドバイスを受けながら効率的に転職活動がすすめられるので、ぜひ転職サイトに登録しておくことをおすすめします。
希望条件を整理する
転職活動の方向性がブレないためにも、自分の希望条件を整理し明確にしておきましょう。
まずは自分が働くうえで譲れない希望条件を挙げますが、たとえば私の場合は以下のような条件で転職活動をしました。
- 日勤のみ
- 時給2,000円以上
- 勤務日数は月16日
- 残業が少ない
- 通勤時間は片道30分以内
希望条件が多すぎると、条件に見合った職場がかなり限られてしまうので、最終的には5個くらいに絞っておきましょう。
転職先の情報収集をする
膨大な数の求人情報の中から希望条件に見合ったものを見つけるには、転職サイトの検索機能が便利です。
希望条件を入力するだけで、欲しい求人情報を絞り込むことができます。
さらに自分の経験や得意なスキルを活かせる職場であれば、強みをアピールしてより有利に転職活動がすすめられます。
たとえば慢性期や高齢者看護の経験が豊富であれば、訪問看護や高齢者施設で働くときには有利です
普段から求人情報をチェックする習慣をつけておくと、情報感度がアップし求人情報の良否の判断がスムーズにできるようになります。
転職サイトに登録する
転職サイトに登録すれば、前述した「希望条件の整理」や「転職先の情報収集」が効率的に行えます。
転職サイトの求人情報の検索機能は未登録でも利用できますが、登録して希望条件を伝えておくと、条件に合った求人が出たときに優先的に紹介してもらえます。
また担当のコンサルタントが勤務条件の交渉や履歴書の作成、面接の同行などのサポートもしてくれるので安心です。
何かと忙しい看護師なので、プロの力を借りながら時間を有効に使って転職活動をすすめていきましょう
まとめ:辞めるかについての選択は冷静さと慎重さが大事
今回の記事では「パート看護師が辞めたいと思う理由」と「辞めたいと思ったときの対処法」についてお伝えしました。
- 人間関係で悩む
- 想定以上に忙しくて残業が多い
- 正社員並みの責任を求められる
- 仕事と家庭の両立が難しい
- 看護スキルに自信がない
パート看護師は一般的に勤務時間が短く責任業務が少ないことから、忙しい正職員の看護師からの風当たりがきつくなり、人間関係に悩むことも多いでしょう。
時間的なゆとりや家庭を優先したくてパートを選んだのに、職場によっては正職員並みの仕事内容や責任を求められることもあります。
このような理由から「仕事を辞めたい」と考えてしまいますが、感情的にならずに「辞めた方が良いのか、様子をみた方が良いのか」をまずは冷静に分析し対処してください。
勢いで辞めることはダメですが、いじめやハラスメントで心身が壊れかねない状態であればすぐに辞めるべきですし、一方で転職を繰り返している状態であれば留まってその理由を考えるべきです。
そのうえで辞めることになれば、円満な退職と転職の準備をすすめていきましょう。
辞めることはけしてネガティブな選択ではないので、たとえ辞めたとしても罪悪感をもつことなく、新しい職場で心機一転し働くことが大切です。
パートで働く以上はパートのメリットを活かせる職場で働きましょう
辞めたいのに強い引き止めにあって退職できずに悩んでいる方は、こちらの記事をぜひご覧ください。
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