終活とは、人生の終わりのための活動のことです。
「自分が亡くなった後に周囲の人に迷惑をかけたくない」という考えから終活を始める方が多いと思いますが、今の自分を見つめ直し、残りの人生を健やかで充実して過ごすために終活が必要です。
また老後の心配事である、病気や介護のこと、資産のこと、ペットのこと、葬儀やお墓のことなどについて事前に考え準備しておくことで、老後の不安を減らすことができます。
終活の具体的な活動としては、遺言書やエンディングノートの作成、身辺整理、資産の見直し、生前契約の検討などがあります。
最近では40~50代のまだ終活を始めるには早いと思われる世代の人たちが、終活を考えるようになってきていますが、独身者や既婚者、子どもがいるなど、家族背景によっても終活への取り組み方は違ってきます。
独身者の場合は、介護や財産管理、身元保証人など、家族がいればサポートしてもらえることを自分で行う必要があるため、早いうちに終活をスタートすることをおすすめします。
この記事では、アラフィフ世代の独身者の終活を中心にお伝えしていきます。
終活を始めるタイミング
明確に適切なタイミングがあるわけではありませんが、早ければ早いほど理想的な終活ができることは確かです。
60代頃から終活を意識される方が大半ですが、アラフィフ世代は家族構成やライフスタイルの大きな変化が少なくなり、終活への意識が高まる時期でしょう。
アラフィフ独身の人は、おひとりさまを前提とした終活を始めるタイミングかもしれません
アラフィフが今から始めるべき終活
まずは簡単にできることから、小さく始めることをおすすめします。
身辺整理
身の回りの物をコンパクトにしておくことで、身動きがとりやすくなり、もしものことが起きたときに周囲への負担も少なくできます。
また部屋の物が少なく片付いていると物の位置が把握しやすくなるので、必要なものをすぐに見つけやすくなります。
断捨離・不用品の処分
できるだけ不要な物をなくして、最低限の持ち物での生活に慣れておくことが大切です。
断捨離は一度で終わるものではなく、衣替えや大掃除のときなどに定期的に持ち物を見直すことが必要であり、捨てることの大変さを知ると、物を増やさない生活へと変化していきます。
もし大量の荷物を残したまま亡くなると、それらを処分するには多くの手間と時間、費用がかかり、結果的に周囲に迷惑をかけることになってしまいます。
高齢になると、片付けや捨てることが面倒になり物を溜めがちになるため注意が必要です
資産を明確にする
使ってない銀行口座やクレジットカードを解約し、1つにまとめて管理しやすいようにしておきます。
保有している株や不動産、ローンなどの負債の有無、資産価値のある骨董品や貴金属の有無なども確認し、所有の資産はできるだけシンプルにまとめておきましょう。
データを整理する
パソコンやスマホ、ネット上のデータも整理が必要です。
家族に残しておきたい写真や動画はDVDやクラウドストレージにまとめ、家族にその存在を伝えておき、知られたくない記録などは削除しておきましょう。
LINEやSNSのアカウントの削除や、登録しているアプリやネットサービスの解約などを家族が行う場合のために、IDやパスワードを分かる形で残しておく必要があります。
遺言書の作成
遺言書は、残した遺産を処理するために必要な書類です。
相続人がおらず何も手続きをしなければ、遺産は国庫に入ってしまうので、家族や親戚への相続を考えたり、遺産を渡したい人や寄付したい場所がある場合は、遺言書を作成しておいた方が良いでしょう。
また、相続に関するトラブルを避けるためにも、法的に有効な公正証書遺言にしてください。
エンディングノートの作成
エンディングノートは、終活に関する自分の考えや希望などを残しておくもので、終活をする上で欠かせません。
エンディングノートと遺言書の決定的な違いは、法的効力があるかないかです
どちらも遺産相続などについて希望を書くことができますが、遺言書の内容は法的に強制力があり、エンディングノートには法的な強制力はありません。
遺言書に書くことができるのは死後に関してのみで、範囲も遺産相続や子どもの認知など厳格に決められていますが、エンディングノートは、生きているあいだのことについても書くことができます。
独身者だと誰に向けて書けばいいのかと考えてしまいますが、自分の死後の対応を担ってくれる人に向けて書くことになります。
専用のエンディングノートも市販されていますが、作成に関して決まった形式はないので、普通のノートや手紙、パソコンを用いて書いても大丈夫です。
家族や身近な人が困らないように、いざというときに必要となる内容を記しておきましょう。
- 自分の基本情報
- 遺言書の有無
- 財産や資産について
- ペットについて
- 家族や友人への感謝
- 死後に連絡してほしい親族や友人の連絡先
- 医療や介護の希望
- 葬儀やお墓に関する希望
- 預金銀行やクレジットカードの情報
- 保険、ローンなどの情報
- パソコンやスマホの情報やID・パスワード、保存データ
- SNSのアカウント情報やアプリのID・パスワード、処理の希望(解約・削除など)
エンディングノートを作成したら、保管場所を知らせておくか、見つけやすい場所に置いておき、必要な人に気付いてもらえるようにしておきましょう。
時間が経つと財産や資産、相続人、健康状態などは変化し、また自分の伝えたいことや考えも変わっていくので、書き終えた後も定期的に見直すようにしてください。
葬儀やお墓の準備
独身者で親族に手間をかけたくない場合、事前に葬儀社へ依頼して葬儀の準備や支払いを済ませておけば、葬儀を執り行うことができます。
永代供養を取り扱っている葬儀社であれば、お墓の管理の依頼も可能ですが、先代からお墓を継いでいる場合、永代供養墓への改葬による墓じまいを考えるのもひとつの方法です。
ペットのための終活
もしも自分が長期入院したり、突然亡くなってしまうようなことがあれば、誰がペットの世話をしてくれるのかを考えておかなくてはなりません。
誰にペットを託したいのか、どのようにお世話をしてほしいのか、などの希望をエンディングノートに書いておきます。
基本的な情報だけでなく、食べているごはんの種類やおやつ、お気に入りのおもちゃ、持病や服用している薬の有無、かかりつけの動物病院などの細かい情報を書いておくことも必要です。
ペット信託の仕組み
このような不測の事態が起きた場合に、ペットを預かってくれるサービスとして、ペットのための信託契約があります。
ペットの生命保険のようなもので、保険金の代わりにペットの世話をしてもらう契約を交わします
ペット信託の契約をしておくことで、飼い主が急な病気やケガ、死亡などによりペットの面倒をみることができなくなったとしても、自ら選んだ人や団体に財産を託して、そのペットを飼育してもらえます。
飼い主が亡くなって相続が発生したとしても、ペット信託を行っていることで相続財産とペットの飼育費を分離することができるので、ペットに確実に財産を残すことが可能です。
また受託者(ペットを飼育してもらう人)に対して監督人を設置することもできるので、信託財産(ペット)の管理方法が適切か、信託内容を遵守しているかを監視及び監督してもらえます。
ペット信託を取り扱う専門業者はまだ少なく費用も高額ですが、専門業者に契約する場合の価格の相場を事前に確認しておくと良いでしょう。
頼れる人がいないときの生前契約
頼れる人がいるといないとではやるべきことが変わるので、頼れる人がいる場合はその人にきちんと相談しておくと良いでしょう。
頼れる人がいない場合は生前契約を検討し、万が一に備えて準備しておくことが大事です
ざっくりとした終活に関係する生前契約の流れは、以下のようになります。
1 | 現在 | エンディングノートの作成 |
2 | 元気で自立している | 見守り契約、身元保証人契約 |
3 | 外出が困難になった | 財産管理等委任契約 |
4 | 死後の備えが必要になった | 死後事務委任契約 |
5 | 認知症のリスクが出た | 任意後見契約の締結 |
6 | 認知症を発症した | 任意後見契約の発動 |
生前契約を結ぶ方の多くは、自分の状況によってそれぞれの契約を組み合わせ、より万全の準備をしています。
見守り契約
見守り契約とは、任意後見契約の効力が発生するまでのあいだ、任意後見人になる予定の方が本人と定期的にコミュニケーションをとり、任意後見契約を始めるタイミングを判断してくれる契約です。
任意後見人になる予定の方は、定期的に電話連絡や自宅訪問などを行い、健康状態や生活状況を確認してくれるので、コミュニケーションにより信頼関係を構築しやすいというメリットがあります。
自分の判断力がある見守り契約中に、将来後見人になってくれる方の対応を確認できるので、任意後見契約の見直しや解除という選択肢も検討することができます。
身元保証人契約
身元保証人は身元を保証するだけでなく、緊急時の連絡先となり、本人が会社に故意や過失によって損害を与えたときには連帯責任を負うこともあります。
高齢者になったときに身元保証人を求められるのは、主に入院と高齢者施設へ入居するときです
身元保証人が必要になる理由としては、緊急時の連絡先、金銭保証、本人死亡時の遺体と遺留品の引取、認知症になったときのため、などがあります。
身元保証人がいない場合、高齢者施設などへの入居を断られてしまったり、入院や手術のときに必要な医療が受けられないというリスクもあります。
身元保証人は家族や親しい友人に依頼することが多いですが、身元保証人が負う責任は決して軽いものではないため、誰に依頼するかは難しいところです。
独身者や家族や親族がいても頼りにくいなど、身近に頼ることができる方がいない場合は、身元保証を代行するサービス業者の利用を検討しても良いかもしれません。
財産管理等委任契約
財産管理委任契約とは、財産管理と療養看護に関する委任契約のことで、単に委任契約と呼ばれることもあります。
判断能力に問題がなければ誰でも利用することができ、病気や怪我により外出が困難になったときに、財産の管理や病院、福祉サービスなどの利用手続きを本人の代わりに行ってもらいます。
依頼する財産管理と療養看護の内容や期間は自由に決めることができます
財産管理委任契約は、任意後見契約とセットで利用される場合が多く、判断能力がしっかりしているあいだは財産管理委任契約を利用し、判断能力の低下がみられるようになってからは任意後見契約に移行するという流れになります。
死後事務委任契約
死後事務委任契約は、本人が亡くなった後をサポートするための契約です。
任意後見契約や財産管理契約などは、原則として本人が亡くなると代理権が消滅するため、遺体の引取や葬儀に関すること、医療費の精算、施設や賃貸住宅の費用の支払いや退去手続き、その他の諸手続等の事務手続きをすることはできません。
契約の中で、死後の手続きに関する希望や誰に何を任せるかを決めておくことで、葬儀・火葬・納骨など、医療費の支払い、施設の退去手続きのことなどについて、自分の望むような形で、死後の手続きを対応してもらうことが可能になります。
任意後見契約
任意後見契約では、本人が認知症などにより判断能力が低下したときに、あらかじめ契約した範囲で任意後見人が本人に代わり法律行為を行ってくれます。
本人の判断能力がしっかりしているときに任意後見契約を行うことが必要です
将来的に判断能力が低下してしまったときに、家庭裁判所への申し立てにより任意後見監督人が選任され、任意後見人が正式に就任することで、後見業務を行うことができるようになります。
アラフィフから終活を始めることのメリット
アラフィフの40代・50代はまだ働き盛りの世代で、終活を自分のこととして考えにくいかもしれませんが、アラフィフから始めることには多くのメリットがあります。
老後の不安が少なくなる
早くから老後に備えて準備ができるので、老後の不安が少なくなり、さまざまな選択や決断に備えることができます。
- いざというときは誰に頼るのか
- いずれは施設に入りたいのか
- 施設に入るとしたら、費用はどれくらい準備しておく必要があるのか
- 病気や怪我をしたときに病院や保険などの手続きはどうするのか
- 認知症になった場合はどうするのか
これらをそのときになって考えても、判断力が低下していたり、経済的な理由などで選択肢がなくなっている可能性もあります。
判断力がしっかりしているアラフィフのあいだに、ある程度決めておくことで、老後の不安はかなり軽減されます。
人生設計の軌道修正ができる
やろうと思いながら後回しにしたり、あきらめていたことなどに改めて取り組むきっかけになります。
また、転職や自分の病気、親の介護など、節目となる出来事が起きるたびに見直しを行い、自分の優先順位や大切なことを再認識することで、人生設計の軌道修正ができます。
整理・断捨離がはかどる
身辺整理や断捨離を行うには体力・気力・判断力が必要になります。
荷物を運んだり、必要なものと不用なものを仕分けたりする作業は老後に行うと大変ですが、アラフィフはまだ体力の衰えも少なく、スムーズに行えます。
貯蓄・資産形成のプランが立てやすい
老後にいくらお金が必要になるのか、何歳頃まで働けるのか、どのくらい収入が得られるのかなどを計算し、おおよその金額を把握しておきます。
預貯金だけでなく、所有する不動産や株式、投資信託資、貴金属などの売却可能なものなどがどのくらいの資産になるか明らかにしておきましょう。
資産が明確になると、今後のための貯蓄・資産形成のプランが立てやすくなります
独身者が終活する理由
いわゆる「おひとりさま」と呼ばれる、結婚をしない人が増えています。
ひとりの生活は自由である一方で寂しさや不安もあり、年齢とともに将来のこと、つまり老後の不安が強くなります。
そのような不安はおひとりさまに限ったことではありませんが、やはりパートナーや子供がいない独身者は、その思いがより強い傾向にあるようです。
内閣府 「令和4年版 少子化社会対策白書」 によると、2020年、50歳になった時点で一度も結婚をしたことがない人の割合は、男性28.3%、女性17.8%となっており、将来的に2040年には男性30%、女性19%まで上昇するともいわれています。
アラフィフ世代が終活をする主な理由として、以下のようなことが上げられます。
- 家族に迷惑をかけたくない
- 後に何も残したくない
- 病気や怪我、介護生活で寝たきりになった場合に備える
- 自分の人生の終わり方は自分で決めたい
- 自分の人生の棚卸し、整理をしたい
- 葬儀などの希望を家族に伝えたい
自分に万が一のことがあっても周囲の人たちが困らないように、また言葉で自分の意思を伝えられなくなったときに、自分の要望を知ってもらうために終活をしている人が多いようです。
アラフィフ独身の私の終活
私はアラフィフで結婚の予定もなく、おひとりさまを前提にした終活の真っ最中です。
エンディングノートは市販の物を購入し、少しずつ書いていますが、思っていたより書く内容が多くて時間がかかっています。
また一昨年に引越ししたときに、かなり気合を入れて断捨離をしたので、身の回りの荷物は大分減らすことができ、ミニマリストに近い生活が送れています。
両親は健在ですが、子どもに墓の管理をさせたくないと言って墓じまいをし、自分たちの永代供養墓も準備してくれました。
私自身はペットと入れる永代供養墓を探す予定です
まだ早いかもしれませんが、生前契約の代行サービスを依頼できる業者も検討しています。
取り組めていることはまだまだ少ないですが、エンディングノートは情報がまとまり、書くことで頭の中の考えが整理されるのでおすすめです。
まとめ:終活を始めて未来について考えよう!
終活はただの手続きではなく、人生の振り返りや未来について考える大切な時間です。
自分に不測の事態が起きたとき、家族がいれば対応を任せることができるかもしれませんが、独身者にはそのような存在がいないかもしれません。
アラフィフ独身者は、体力も判断力もまだまだ充実している世代ですから、自分が高齢者になってから無策で慌てたり後悔しないように、一日でも早く終活をスタートしましょう。
きちんと備えることで、独身者でも老後の不安がない楽しい人生を送りましょう!
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