犬と暮らしている方は、そのコとどこで出会いましたか?
これから犬をお迎えしようと考えている方は、どこからお迎えすることを検討されていますか?
私は、今は亡き先代犬はブリーダーから、現在一緒に暮らしている2代目犬は動物保護団体からお迎えしました。
多くの方は犬と出会う場所として、まず最初にペットショップとブリーダーを考えるのではないでしょうか。
かくいう私も先代犬をお迎えするときは、ペットショップに通ったり、ブリーダー宅に訪問して、出会いを探していました。
しかし後になって、犬が売買される背景には多くの問題があることを知りました。
ブリーダーの中には、身動きがとれないようなケージの中に閉じ込めて、病気になっても病院に連れて行かず、不衛生で劣悪な環境でひたすら出産を繰り返させる、非情な人もいます。
そして、そのような事実を知りながらもそのブリーダーから犬を仕入れ、販売するペットショップがあるのです。
もちろんすべてのペットショップやブリーダーがそうではなく、誠実に向き合っている人が多くいることも事実です。
今回はペットショップとブリーダーの現状や課題、それに関連した法律についてお伝えしていきたいと思います。
動物の愛護及び管理に関する法律とは
動物の愛護及び管理に関する法律は、1973年に制定された動物の虐待などの防止について定められた法律で、略称では動物愛護管理法、動物愛護法と呼ばれたりします。
人間と動物が豊かに共生できる社会を実現するために作られた法律で、その後飼い主やペット事業者の責任や義務が強化される条項が盛り込まれ、これまでに4度改正されており、最も新しい法改正は2019年6月19日に公布されました。
最新の法改正では、動物愛護と虐待防止の強い観点から、下記の3点が大きく改正されました。
・数値規制(飼養管理基準の厳格化)
・虐待の罰則強化
・幼齢犬猫の販売制限(8週齢規制)
その他にもマイクロチップの装着義務化、獣医師による通報の義務化など、様々な改正が盛り込まれています。
動物取扱業者に対する数値規制
この規制は2021年6月から運用開始される予定でしたが、経過措置がとられており、完全施行されるのは2024年6月となります。
数値規制導入の背景には、多頭飼育によりペットを虐待する悪質業者の存在や動物愛護意識の高まりなどがあります。
繁殖業者やペットショップなど、第1種動物取扱業者に対して、犬猫の飼養施設の構造、規模、従業員数、環境管理の状況や繁殖の回数などについて、飼養または管理に関する基準を具体的に数値で定めるように法改正がされました。
経過措置がとられた理由は、業者からの反発の声が多かったためで、従業員1人当たりの飼育頭数を守れず廃業となったり、数値規制を守るために動物の遺棄や殺処分が増えるのではないかといった意見が出ています。
メディアによると、数値規制の施行で行き場を失う犬猫は13万頭にのぼるともいわれています。
飼養管理基準の具体例
今まであいまいだった基準をはっきりと数値化することで、それを守らない悪質なブリーダーやペットショップを法的に取り締まりやすくしました。
【寝床や休息場所となるケージの大きさ】
タテ:体長の2倍以上×ヨコ:体長の1.5倍以上×高さ:体高の2倍以上。
【運動スペースの確保と運動時間】
ケージサイズの床面積の6倍×高さ体高の2倍の運動スペースを確保し、1日3時間以上は運動スペースに出し、運動させる。
【従業員1人当たりの飼育頭数】
従業員1人あたりにつき、新規業者は繁殖犬は15頭まで、販売犬は20頭まで、既存業者は繁殖犬は25頭、販売犬は30頭まで飼育可能。
2024年6月からは、既存業者も新規業者と同じ規制が適用される。
【繁殖の回数、年齢】
生涯出産回数は6回まで、メスの交配は6歳まで(満7歳未満)
ただし、満7歳時点で生涯出産回数が6回未満であることを証明できる場合は、交配は7歳までとする。
また7歳未満であろうとなかろうと、年齢や出産回数にかかわらず、繁殖に適さない個体は交配を認めない。
動物虐待罪を厳罰化
動物殺傷罪等の厳罰化は、2020年6月から施行されています。
動物をみだりに殺したり傷つけたりする行為には、従来は2年以下の懲役または200万円以下の罰金とされていましたが、現在は5年以下の懲役または500万円以下の罰金に厳罰化されています。
また動物の虐待や遺棄に関しては、100万円以下の罰金とされていたものが、現在は1年以下の懲役または100万円以下の罰金とこちらも罰則が強化されました。
生後56日齢以内の犬猫の販売を禁止(8週齢規制)
この規制は2021年6月から運用開始されています。
8週齢規制とは、生後56日(8週)に満たない犬猫の販売を禁止する規定で、従来までは生後49日(7週)とされていたものから1週間延長されました。
幼齢のかわいいうちに高値で売りたいペット業界と、幼齢の生体販売に反対する動物愛護団体とで長く議論されてきた問題でした。
海外で得られたエビデンスに基づき、8週齢まで母犬及び兄弟犬と共に生活させることで、成長後の問題行動の予防(社会性の習得)、母犬からの免疫力を高め流通過程での感染症を減少させることが認められ、ペット先進国のドイツやアメリカと同じ基準にまで引き上げられました。
ただし、日本犬6犬種(柴犬、秋田犬、北海道犬、甲斐犬、紀州犬、四国犬)については「天然記念物の保存」を理由に、ブリーダーからの販売に限り8週齢規制の適用対象外とされています。
ペットショップとブリーダーの現状と課題
犬や猫が販売されているペットショップは、気軽に立ち寄れるさまざまな場所に存在しています。
ペットショップは、商品である動物を安定して供給するために、いのちを大量生産するというシステムのもとに成立しています。
そして売れ残った動物の行く末や繁殖用の犬猫の飼育環境、安易にペットを購入した結果の飼育放棄など、ペットショップは残酷な現実と隣り合わせの存在です。
ペットの入手先に関するデータ
引用元:一般社団法人ペットフード協会 令和4年 全国犬猫飼育実態調査
犬に関してはどの年代においても、半数以上の人がペットショップから購入しています。
猫はペットショップでの購入より、野良猫を拾ったり、友人・知人からもらったケースの方が多くなっています。
日本ではペットショップは、ホームセンターやショッピングモールなど、気軽に立ち寄れる身近な場所に多くあります。
幼齢であるほど高価で早く売れるため、生後3か月未満のかわいい盛りの子犬や子猫を中心に販売し、「一目惚れした」などと言って衝動買いする客が後を絶ちません。
そして人気の犬種や猫種、さまざま種類のペットを揃えているペットショップが選ばれやすくなるため、ペットショップ業界の競争はさらに激しくなります。
また保護団体からの譲渡とは異なり、ペットショップの場合は飼い主としての資格や家族構成、飼育環境などの条件を問われることはないため、購入に費用がかかっても、誰でも簡単に購入できるペットショップの需要は高く、利用されているのだと思われます。
ペットショップが抱える問題
動物販売の流通経路
ブリーダーが繁殖した動物は、以下の図のようにオークションや卸売業者を経て、ペットショップ(販売店)が仕入れ、客(最終飼い主)に販売しています。
引用元:環境省資料 幼齢期の動物の販売について
ペットショップの経営を支えているのは、客がペットを購入した後に、すぐに新たな動物を供給するという、いのちの大量生産・大量消費のシステムです。
ペットショップでは売れ時の幼齢期を過ぎて、少しでも成長すると売れ残ってしまい、売れ残った動物の行く末については、不透明な部分が多くあります。
繁殖用の犬猫は劣悪な環境で飼育されていることも多く、繁殖の役目を終えると飼育放棄をされるケースもあります。
子犬は体が未熟なうちに輸送されることで、流通の過程で死亡することもあります。
生体販売
悪徳なブリーダーは悪徳なペットショップを通じて、子犬や子猫を販売しているため、以前から日本のペットショップは生体販売をなくすべきだという意見が強くあります。
悪徳なブリーダーは、ブリーダーから直接購入したいという一般消費者がいても、劣悪な飼育環境を見せることができないため、販売するためには同じく悪徳のペットショップを利用することになります。
このような悪循環を断つために、ペットショップ自体をなくせば悪徳業者の販売ルートが絶たれ、悪徳業者の撲滅につながるのではないかという考えがありますが、業界団体の反発や忖度があり、生体販売を禁止する仕組みをすぐに導入することは困難なようです。
犬の売れ残り
ペットは生後2ヶ月頃から店頭に出すことができますが、売れるピークは3ヶ月頃までです。
売れ時といわれるこの1ヶ月間に売れなかった犬猫は、その後売れ残りとして扱われ、 月齢が上がるにつれて値引きをされていき、半年から一年ほどたつと商品として扱うところはほとんどなくなります。
ペットショップで売れ残った犬猫の行く末は、ペットショップによって異なり不透明な部分が多くあります。
ごく一部の良心的なペットショップでは、動物保護団体と連携して里親探しを行う場合もありますが、一般的なペットショップでは、ブリーダーに返還・売却されたり、実験用の動物を扱う業者に売却されたりするといわれています。
また引取り屋というペットショップなどの流通過程で売れ残った子犬子猫や、繁殖場で繁殖能力が衰えた犬を、1匹あたり数千円~数万円程度の費用を受取り引き取るビジネスが存在します。
売れる犬は自分の店で転売、繁殖可能な犬は子犬を産ませ販売しますが、それでも売れ残る、又は繁殖にも使えない犬猫は、ケージの中に入れられたまま、給餌や掃除の世話などされない状態で放置されることになります。
マイクロチップ登録制度
2022年6月から、ペットショップやブリーダーで販売される犬猫について、マイクロチップ登録制度が始まりました。
引用元:環境省自然環境局 犬と猫のマイクロチップ情報登録についてより引用
マイクロチップの装着と情報登録はペットショップ・ブリーダーに義務付けられ、すでにペットを飼っている場合は努力義務になります。
ペットを安易にペットショップで購入できる仕組みは、飼育放棄を増やす原因にもなっているため、マイクロチップが装着されることで飼育放棄の防止や、ペットショップで売れ残った犬猫に対しての適切な扱いを期待できます。
ペットを売らないペットショップ
岡山県にペットを売らないペットショップの先駆けとなったchouchou(シュシュ)というお店があります。
元々はペットの販売を行っていましたが、2015年春から販売をやめ、岡山県、岡山市、倉敷市の動物愛護センター・保健所で殺処分を待つ犬を引き取り、無償で里親探しをしています。
民間企業であるペットショップは、利益が出ないと経営が成り立ちませんが、シュシュはペット用品の販売やトリミング事業、グッズの通信販売により収益を得ています。
驚くことに、売り上げも利益もペットの販売をやめてからの方が伸びているそうです。
店舗には里親探しコーナーが設置されており、一般的なペットショップよりはるかに広いケージに里親を待つ犬たちがいます。
いのちを物のように店に陳列し、いのちの売買がされるペットショップに疑問を感じていた消費者が、そのような現状を問題提起し、新しいかたちのペットショップをみせてくれたシュシュに対し、共感し支持しているのだと思います。
ペットを売らないペットショップとして話題になり、それを支持する人たちが来店したり、通信販売で商品を購入しており、私もその一人です
私の保護犬との出会いと暮らしについての記事も、よかったらご覧ください。
おわりに
ペットショップで可愛い子犬や子猫をみるとき、その背景にある残酷な現実を想像してください。
それでもペットショップから購入できますか?
私は生体販売をしているペットショップでは、絶対にペット商品を購入していません。
小さな抵抗かもしれませんが、前述したシュシュのようなペットショップを全力で支持することで、悪徳なペットショップがなくなることを願っています。
ペットショップは消費者である私たちからは見えにくい、さまざまな問題を抱えています。
ペットを飼う前に、まずペットショップの背景にある問題や犬猫の殺処分の現状について目を向けることから始めてみてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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