私は特別養護老人ホームで看護師として働いています。
病院勤務をしていたときは「介護施設はゆったりとしていて楽そう」「医師がおらず看護師が少ないのは不安」「看護スキルが落ちそう」といったイメージをもっていました。
介護施設で働くことは看護師のキャリアとして評価されない、再び病院で働くことが難しくなってしまうと考える人もいます
介護施設の看護師の仕事は入居者の健康管理がメインで、病院と比較すると医療行為は少ないため、看護師経験が浅くブランクがあっても働きやすいメリットがあります。
しかし医師が常駐していないことから、緊急時には看護師の判断が必要な場合が多く、責任が大きいためストレスを感じる人も多くいます。
- 介護施設に興味があり、働いてみたい
- 介護施設で働く看護師の仕事内容や役割について知りたい
- 介護施設への転職活動の進め方がわからない
これらに当てはまることがある人は、ぜひこの記事を読み進めてください。
介護施設の看護師のリアルな仕事内容や転職サービスの活用について、現役ならではの立場から詳しくお伝えします
介護施設の種類・特徴
介護施設は介護を受けられる施設の総称で、大きく分けると公的施設と民間施設の2種類があります。
設置主体が自治体や社会福祉法人で、介護保険サービスで利用できる公的な施設のことを介護保険施設とよんでいます。
介護保険施設には、以下の4種類があります。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
介護療養型医療施設は2023年度で廃止が決まっており、介護医療院へ移行中です。
民間施設として主なものには、以下のようなものがあります。
- グループホーム
- 有料老人ホーム
- サービス付き高齢者住宅
各施設の役割や入居対象者、看護師の配置基準の一覧です。
特別養護老人ホーム | 介護老人保健施設 | 介護医療院 | グループホーム | 介護付き有料老人ホーム | サービス付き高齢者住宅 | |
施設の役割 | 常時介護を必要とし、在宅での生活が困難な高齢者に対して、生活全般の介護を提供 | 医療的管理の下、リハビリや介護を提供し、在宅復帰を目指す | 要介護者に対して「長期療養のための医療」と「日常生活上の世話(介護)」を一体的に提供 | 認知症の高齢者に対して、共同生活住居で家庭的な環境と地域住民との交流のもと、自分の能力に応じて自立した生活が送れるように日常生活の介護を提供 | 要介護の入居者の状態に合わせて、食事、介護、家事、健康管理などの必要なサービスを提供 | 高齢者向けの賃貸住宅 入居者の安否確認・生活相談などのサービスを提供するが食事や日常生活支援サービスの提供義務なし |
入居対象 | 原則要介護3以上 | 要介護1以上 | 要介護1以上 | 要支援2以上 認知症の診断を受けている | 要支援1以上 対象基準は各施設により違う | 60歳以上の高齢者 要介護認定を受けた60歳未満の方 |
看護師の配置基準 | 看護・介護計3:1 入居者が30を超えない施設では常勤換算法で1人以上、30以上50以下の施設では2人以上 | 看護・介護計3:1(うち看護2/7) | 6:1 | 配置義務なし | 入居者30人までは、常勤換算1人以上 入居者が50人増すごとに1人追加 | 入居者30人までは、常勤換算1人以上 入居者が50人増すごとに1人追加 |
介護施設における看護師の仕事と役割
看護師の主な役割は入居者の健康管理ですが、医療行為や急変時の対応、施設によっては看取りも重要な仕事となります。
介護施設には協力病院はあっても、病院のように医師が24時間常駐していないため、緊急時には看護師の判断が必要な場面が多くあります。
また介護士との連携はとても重要で、指示出しや協力し合ってケアを行う場面が多くあります。
介護施設で行う一般的な看護業務
介護施設の種類や入居者の医療依存度によって看護業務の内容は違いますが、日常的に行われているのは以下のような業務になります。
病院と比べると複雑な看護業務はありません。
【日常的な看護業務】
- 健康管理(バイタルチェックや体調確認)
- 医師の指示に基づいた医療行為(胃ろう管理、喀痰吸引、創傷・褥瘡処置、尿道カテーテル管理など)
- 服薬の管理
- 訪問診療時の診察介助
- 通院の付き添い
- 入退所の対応
- 看護記録
- 看取り、ターミナルケア
- オンコール対応
介護施設で行われる医療行為については、病院と比較すると医療行為を行う場面はかなり少ないので、病院から転職した人は少し物足りなさを感じるかもしれません。
介護医療院は療養型病院に近いレベルの医療行為を行えるので、看護スキルを維持したい人にはおすすめの介護施設です
【介護施設で行われることが多い医療行為】
- 喀痰吸引
- 経管栄養の管理(胃ろう・腸ろう・経鼻)
- 尿道カテーテルの管理
- 褥瘡処置
- 採血
- インスリン注射
- 点滴
- 酸素療法
介護士と協力して介護業務を行う
基本的に介護業務は介護士が行いますが、人手が足りないときには看護師も行います。
誤嚥のリスクがある方の食事介助、カテーテルや褥瘡がある方の入浴介助など、医療依存度が高い入居者には看護師が介護業務に介入することが多いです。
介護施設の夜勤とオンコール
介護老人保健施設や介護付き有料老人ホームでは、看護師が夜勤に入る場合が多いですが、夜勤がない介護施設では夜間はオンコールで対応する施設が一般的です。
介護施設で働くメリット
- 体力的な負担が少ない
- 高い看護スキルを求められない
- 残業が少ない
- 日勤メインで働くことができる
- 入居者と長くゆっくり関われる
体力的な負担が少ない
介護業務は介護士が中心に行うので、病院と比べると体力的な負担は少なく、私のような年配の看護師でも働きやすいでしょう。
しかし人手不足などのため看護師も介護業務を行うこともあり、介護士と協力し合うことは病院でも介護施設でも同様に大切です。
介護業務が苦手な人は、転職活動時に看護師が対応する介護業務の内容について確認しておくことをおすすめします
高い看護スキルを求められない
入居者の健康管理が主な役割なので、高い看護スキルは必要ありません。
介護施設によって対応できる医療行為は異なりますが、経管栄養の管理や喀痰吸引、褥瘡処置、尿道カテーテルの管理などは日常的に行われることが多いです。
残業が少ない
ルーティン業務がメインで突発的な業務が発生しにくいため、残業はほとんどありません。
管理職になると日々の看護業務以外の管理業務も行うため、残業が発生しやすくなります
日勤メインで働くことができる
看護師が夜勤に入る介護施設は限られており、ほとんどは日勤メインで働くことができます。
早出や遅出の勤務があっても日中が中心の勤務時間になることで、生活リズムや体調が整います。
入居者と長くゆっくり関われる
入居期間が長く、介護施設によっては終のすみかとして最期まで暮らす方も多いため、入居者ひとり一人と長期的にじっくりと向き合う看護ができます。
介護施設で働くデメリット
- 職場に看護師が少なくて不安
- 病院と比べると給料が低め
- 看護のスキルアップは難しい
- オンコールがある
職場に看護師が少なくて不安
介護施設の規模や配置基準によりますが、看護師の人数は数人であることがほとんどです。
状態の安定した入居者がほとんどですが、医師が常駐していないことや看護師の数が少ないことによる不安やプレッシャーは、慣れるまでは大きなストレスになるでしょう。
人間関係は人数が少ないがゆえに閉鎖的になりやすく、合わない同僚がいると働きづらくなってしまいます
病院と比べると給料が低め
給料は病院よりも低い傾向がありますが、地域や勤続・経験年数によっても変わります。
病院勤務で夜勤・残業手当が多かった人は、その分の金額は給料が少なると考えておきましょう。
看護のスキルアップは難しい
介護施設でも医療行為を行っていますが、医療施設ではないので医療設備が整備されておらず、医師が常駐していることも稀なので、看護師が行う医療行為は限られています。
そもそも入居者の医療依存度は低く、高度な医療処置を希望する場合は病院に移動します。
そのため看護スキルや知識を習得する機会が少なく、結果的にスキルアップは難しくなり、看護師としてのキャリア向上は望めないかもしれません
オンコールがある
看護師の夜勤がない介護施設では、夜間オンコール体制をとっている場合がほとんどです。
オンコールを担当する回数は施設によって異なりますが、いつ呼び出しがあるかわからない状況は人によってはストレスになるでしょう。
病院看護と施設看護の主な違い
病院と介護施設の大きな違いは「病院は治療する場所」「介護施設は生活する場所」ということでしょう。
骨折や誤嚥性肺炎などで一時的に入院治療が必要になることはありますが、施設で対応可能な医療行為の範囲であれば、治療よりも生活や本人・家族の希望を優先することが多くあります。
また医師が常駐している介護施設はほとんどなく、病院のように緊急時にすぐに医師に報告して診察してもらうことはできません。
看護師の医療的な判断や介護士への指示出しが必要な場面が多くあり、責任やプレッシャーを強く感じてしまう人もいます。
病院という医療従事者が多い環境で働いてきた人は、時間帯によっては看護師は自分だけ、という状況に強い不安をもちやすいです
病院に比べて医療行為を行う機会が圧倒的に少ないことも、介護施設と病院の大きな違いの一つです。
医療行為が少ない方が良いと納得しているなら問題ありませんが、スキルアップの維持や向上を目指すなら、職場以外で自主的に学ぶ機会をつくる必要があります。
介護施設内で行う医療行為や緊急時の対応は、高度な看護スキルを求められることはなく、落ち着いて基本に忠実に行うことを求められます。
介護施設で働く看護師の給料
常勤看護師の介護施設別の給料をみていきます。
施設の種類や看護師の経験年数、勤続年数によって給料には差が出るので、あくまで参考としてください。
正看護師 月給 | 正看護師 年収 | 准看護師 月給 | 准看護師 年収 | |
---|---|---|---|---|
特別養護老人ホーム | 422,652円 | 5,071,824円 | 382,542円 | 4,590,504円 |
介護老人保健施設 | 448,962円 | 5,387,544円 | 382,799円 | 4,593,588円 |
介護医療院 | 448,365円 | 5,380,380円 | 402,541円 | 4,830,492円 |
グループホーム | 397,611円 | 4,771,332円 | 319,635円 | 3,835,620円 |
有料老人ホーム (特定施設入居者生活介護) | 427,972円 | 5,135,664円 | 375,933円 | 4,511,196円 |
介護施設では夜勤や残業がない場合が多いので、その手当分が減るかもしれません
介護施設へ転職するなら転職サイトの利用がおすすめ
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私は介護系の職場では特養とデイケアの勤務経験があり、それぞれの転職活動で転職サイトを利用しました。
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介護施設への転職では看護師だけでなく、介護士の役割や仕事内容、人間関係もとても重要です。
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相性が合わない担当者では転職活動がスムーズに進みませんので、気が引けるかもしれませんが相談窓口を通じて交替を申し出ましょう。
以下の記事では、実績が豊富で安心して利用できる転職サイトを紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
まとめ
今回の記事の主な内容は以下になります。
- 介護施設の看護師の仕事と役割は、利用者の健康管理、医療行為、介護業務
- 急変などの緊急時には看護師の判断が必要な場合が多く、責任が大きい
- 転職活動には転職サービスを利用したほうが効率的
介護施設では高い看護スキルを求められることはなく、夜勤や残業がない場合が多いので、ブランクのある人や経験の浅い人でも働きやすい職場だと思います。
しかし医療行為が少なくスキルアップは難しいなどの物足りなさを感じるかもしれません。
私はアラフィフになり、体調も良いとはいえない今の状態を考えると、介護施設が働きやすい職場だと思っています。
そして転職を考えるなら、ひとりで転職活動をするよりも断然効率的な転職サービスを利用することをおすすめします。
転職サービスは「まだ転職する予定はなく、情報収集だけしたい」という使い方もできるので、上手に活用していきましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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