病院で働く看護師にとって夜勤は避けられない業務のひとつです。
もちろん夜勤をしない働き方もありますが、夜勤手当の有無は給与に大きく影響するため、収入面を考えると夜勤をやめられない人もいるでしょう。
私も長いあいだ夜勤をしてきましたが、睡眠障害や慢性疲労に悩まされ、年齢とともにその症状は深刻になっていきました
50代になると個人差はあるものの、体力や適応能力が低下し、夜勤がしんどいと思うことが増えていきます。
- 体力がもたない
- 生活リズムが崩れる
- 体調が悪くても休めない
50代看護師はこのようなツラさを抱えながら日々夜勤をこなしています。
若い頃なら体力と気合で乗り切れていたことが年齢とともに難しくなり、ツラさやしんどさは増すばかりです。
この記事では夜勤がツライと感じたときの対処法として、日々の生活に手軽に取り入れられること、働き方や職場の見直し方についてお伝えしています。
夜勤がツライと思っている50代看護師の方は、今後の夜勤との付き合い方を考えるきっかけにしてください
50代看護師が夜勤でツライと思うこと
夜勤は多くの看護師にとってツライ勤務であり、体力がある若い世代でさえ夜勤はツライと感じるのに、50代ともなればそのツラさはさらに深刻です。
少人数体制の夜勤で急変や緊急入院などイレギュラーなことが発生すると、休憩も仮眠もとれずに働き続けたうえ、残業まですることは稀ではありません。
交代勤務で生活リズムは乱れ、体調を崩しても人手不足の職場では休むことすら厳しい状況です。
では過酷な夜勤に耐えている50代看護師がツライを思うことについて、具体的にみていきましょう。
- 体力が続かない
- 夜勤スタッフは少人数なので不安
- 生活リズムが崩れやすい
- 体調が悪くても休みにくい
- 仕事が終わらず残業になる
体力が続かない
2交代の夜勤の勤務時間は16時間以上に及ぶ場合が多く、落ち着いた夜勤であっても終業時にはかなりの疲労を感じます。
3交代であれば勤務時間が短いため、2交代よりは疲労が少なく体力を維持しやすいでしょう。
休憩や仮眠もとれないような忙しい夜勤のときには、明け方くらいには体力が尽きてしまい、気力だけで働くような状態になってしまいます。
50代になって「体力が落ちた」「休んでも疲れがとれない」と感じることが増えていませんか?
夜勤スタッフは少人数なので不安
夜勤看護師の配置人数は職場によって異なりますが、一般病棟では2~3人、療養病棟では1人体制が中心です。
日勤と比べると看護師一人当たりの受け持ち患者数は多くなり、重症患者がいる場合などは忙しくなることが予測されるため不安になってしまいます。
また50代は指導する側の立場になりやすく、夜勤に不慣れな新人看護師と組むことも多いでしょう。
スタッフが少ない夜勤において、患者のこと以外に新人看護師にも気を配りながら仕事をするのは、ベテラン看護師であってプレッシャーでありストレスです。
生活リズムが崩れやすい
夜勤をしていると、日勤・夜勤・休日の3パターンの生活リズムになります。
3交代では夜勤が準夜・深夜の2パターンあり、さらに早出・遅出の勤務もあれば、より多くの勤務パターンに対応しなければなりません。
夜勤をすると体内時計が乱れ生活リズムも崩れてしまいますが、年齢とともに崩れた生活リズムを戻すのに時間がかかるようになります。
夜勤をしていた頃は、常に慢性的な時差ボケ状態でした
体調が悪くても休みにくい
50代は更年期の影響もあり、なにかと体調に変化をきたしやすい世代です。
そのうえ心身に負担のかかる夜勤業務をこなすので、体調を崩してしまうことは少なくありません。
休みたくてもギリギリの人数でシフトが組まれているため、気兼ねして「休みたい」と言えずに無理をした結果、さらに体調が悪化するという悪循環に陥ります。
夜勤を休むと他のスタッフがその穴を埋めることになるので、シフト全体が大きく変更される場合もあり、日勤以上に夜勤は休みづらい雰囲気があります。
仕事が終わらず残業になる
患者の起床後からは、バイタル測定や採血、血糖測定、朝食・内服の介助など次々に業務が続くため、記録の時間がなかなかとれません。
そしてあっという間に申し送りの時間となり、まだ記録が残っているときは残業になってしまいます。
記録以外の残務があっても忙しそうな日勤スタッフには頼みにくく、夜勤スタッフが残業になることはよくあります。
夜勤で疲れているうえに残業も重なると、体力が落ちている50代には相当堪えます。
夜勤がツライと感じたときの5つの対処法
夜勤はどうしてもツライものですが、その対処法を知っていれば幾分か楽になるでしょう。
しかしそのツラさが深刻で、現在の働き方や職場では解決できないものであれば、最終的に転職が必要になるかもしれません。
いずれにせよ複数の対処法や選択肢をもっておくことが必要です。
日々の生活のなかで取り組めること、働き方や職場の見直しについて、対処法を5つ紹介していきます。
- なるべく同じ生活リズムで過ごす
- 運動や趣味を楽しむことでストレスを緩和する
- 非日常な体験をしてリフレッシュする
- 部署の異動や夜勤を減らす相談をする
- 夜勤のない職場への転職を検討する
なるべく同じ生活リズムで過ごす
夜勤をしていると生活リズムが乱れがちなので、日勤と夜勤の日を同じように過ごすことは無理でも、できるだけ似たリズムに近づける努力は必要です。
たとえば朝に日光を浴びることや起床・就寝時間を統一することは、夜勤で乱れた体内時計をリセットするのに有効です。
夜勤明けは疲れており、帰宅後に夕方まで眠ってしまうことがありますが、夜勤明けは2~3時間の仮眠をとった後はいつもの生活リズムで過ごすようにしましょう。
日本看護協会の「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」に推奨される夜勤前後の過ごし方が紹介されているので参考にしてみてください。
運動や趣味を楽しむことでストレスを緩和する
年齢にかかわらず、体力や健康維持のために運動は必須です。
運動で筋肉を使うと、セロトニンという精神を安定させるホルモンが分泌されるので、ストレス緩和に効果的です。
早歩きやジョギングなどの有酸素運動を行うと身体が活性化されますが、就寝前3時間の運動は眠りの妨げになる可能性があるので避けておきましょう。
運動による適度な疲労は睡眠の質を高めてくれます
また時間を忘れて没頭できるような趣味があれば、良い意味で現実逃避になり気分転換がはかれるでしょう。
非日常的な体験をしてリフレッシュする
まとまった休みを取れるなら旅行に出掛けて、仕事など日々の現実を忘れることは気分転換やストレス解消に有効です。
ちょっと贅沢なホテルや旅館に泊まり、美味しい食事をいただくと「またこのような経験をしたいから、仕事を頑張ろう」というモチベーションにつながります。
旅行に行けるほどの休みやお金がないなら、高級なレストランで食事をしたり、エステでスペシャルコースを受けるのもおすすめです。
非日常的な体験は心を豊かにし、リフレッシュもはかれるので、仕事という現実に戻るときに少し前向きになっている自分がいるはずです。
部署の異動や夜勤を減らす相談をする
現在の職場に対する不満が夜勤だけなら、まずは夜勤のない部署への異動や夜勤回数を減らす相談をして、その職場で働き続ける方法を考えてみましょう。
年齢とともに適応能力は低下するので、新しい職場で仕事を覚えて環境に慣れるには時間がかかり、新たな人間関係を築くためには気疲れもします。
たとえ部署が変わっても慣れた職場で働き続ける方がストレスは少ないですし、雇用側としても辞めないでほしいはずです。
まずは現在の職場で夜勤の負担を減らす働き方ができないか相談してみてください
夜勤のない職場への転職を検討する
現在の職場では自分が希望する働き方ができない場合には、夜勤のない職場への転職を検討してください。
しかし夜勤手当がなくなるため、給与が減ってしまう可能性が高いことは覚悟しておきましょう。
とはいえ夜勤がなくても高収入の職場もあるので、好条件の職場を効率よく見つけたいなら、転職サービスの利用をおすすめします。
夜勤の有無はもちろんのこと、50代であれば年齢による適応能力の低下をふまえ、今後長く勤められるための条件を考えておくことが重要です。
夜勤がツライ50代看護師におススメの職場
まずは夜勤のない職場を選ぶことが第一条件ですが「今までの看護経験を活かせる」「あまり体力を必要としない」という視点で選ぶことも50代看護師には必要です。
このような職場であれば、体力に不安がある50代看護師でも働きやすいでしょう。
そして豊富な看護師経験と即戦力として働けるという強みを活かせば、夜勤ができなくても必要とされる職場はたくさんあります。
50代看護師が活躍しているおススメの職場を5つ紹介しますので、職場を選ぶ際の参考にしてみてください。
- 日勤のみで働ける病棟
- クリニック
- 訪問看護ステーション
- 介護施設
- 検診センター
日勤のみで働ける病棟
病棟勤務でも日勤のみで働ける病院は多くありますが、その中でおススメするのは療養病棟です。
状態が安定した患者が入院しており、入退院や医療行為は一般病棟に比べると少なく、ルーティン業務が中心なので仕事を覚えやすいのがメリットです。
看護師の年齢層も高めなので、同世代の看護師とゆったりと働けます。
しかし一般病棟に比べると、看護業務よりも介護業務が多いので、意外と体力が求められる点は注意しましょう。
クリニック
休日が固定しているので生活リズムが整いやすく、あまり体力を必要としないことがメリットです。
診療科目によって求められる看護スキルは異なりますが、採血や注射・点滴のスキルは必須です。
クリニックでは医師が絶対的なトップであり、医師と相性が合わないと働きづらくなるため、治療方針や考え方などは事前にしっかり確認しておきましょう。
スタッフの人数が少ないためアットホームな反面、閉鎖的で人間関係が難しくなりがちなデメリットがあります
訪問看護ステーション
訪問看護の利用者は病状が安定している方がほとんどで、病院に比べると医療的なケアは少ないものの、入浴・排泄介助などの体力が必要な場面が多くあります。
訪問看護師は常に不足していることから、需要の高さを反映し給与水準は高めです。
夜間・休日のオンコールや訪問時にひとりで対応することに対し、最初は不安やストレスを感じますが、今までの看護経験があれば十分にカバーできます。
年齢層は40代が最も多く、職場の看護師の人数は6人くらいが平均的です。
介護施設
介護施設の看護師の主な役割は入居者の健康管理なので、医療行為は施設で対応できる胃ろう管理や喀痰吸引、褥瘡処置などの限られたものになります。
基本的に医師は常駐しておらず、看取りや急変時の医療対応も重要な役割となるため、看護師に医療的な判断を求められることが多くあります。
介護業務は介護士が行うので、体力的にはかなり楽です。
夜勤のない介護施設では、夜間はオンコール体制で対応することが一般的です
検診センター
健診センターでは、健康な人を対象に健康診断や人間ドックを行っています。
看護師は採血業務を担当することが多いですが、他に視力・聴力検査、尿検査、心電図検査、身長・体重測定などを行う場合もあります。
基本的にすべてルーティン業務で体力も使わないので、業務内容を覚えれば比較的楽に働けるでしょう。
採血のスキルは絶対に必要なので「採血が得意!」という人にはおススメです。
転職活動には転職サイトの利用がおすすめ
転職するにあたり「夜勤がない」「50代でも働きやすい」「体力を必要としない」など希望条件はいろいろありますが、これらの条件に合う職場を自分で探したり、勤務条件を交渉するのは大変です。
しかし転職サイトを利用すれば、希望条件に合った職場の紹介や、職場との条件交渉を代行してくれます。
複数の転職サイトに登録しておくと、より多くの求人情報を得られる、担当コンサルタントからアドバイスを受ける機会が増えるといったメリットがあります。
以下の記事では、おすすめの看護師転職サイトと選び方のポイントを紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
50代看護師の夜勤の現状
最後に夜勤をしている看護師の現状についてお伝えします。
「いつまで夜勤を続けられるだろうか」「夜勤がしんどくて自分が病気になりそう」
夜勤をする看護師がおかれている現状は過酷で、多くの人が不安や悩みを抱えながら働いています。
年齢とともに心身の不調を感じることが増え、夜勤がもたらす健康への影響も心配になるでしょう。
日本看護協会が2013年に「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」を出し、夜勤の負担軽減に向けた取り組みを行っていますが、10年経過した現在でも十分には改善されていません。
夜勤ができる年齢に上限はない
労働基準法61条により満18歳に満たない看護師の深夜業務は制限されていますが、年齢の上限はないので、何歳まででも夜勤を続けることは可能です。
2021年の看護職員実態調査によると、50~59歳の看護師のうちで夜勤(3交代制・2交代制・夜勤専従のいずれか)をしている人の割合は約37%になります。
そして夜勤をしている看護師の割合は年齢が上がるにつれて低くなっており、50代以上では「職場に夜勤はない」あるいは「職場に夜勤はあるが現在はしていない」と回答した人の割合が4割以上となっています。
夜勤回数の平均は2交代が4~5回、3交代が7~8回
夜勤は2交代制か3交代制がほとんどであり、実際に採用されている勤務形態は2交代制の方が多いです。
勤務時間は職場によって多少異なるものの、2交代制は16時~翌朝の9時、3交代制の準夜勤は16~1時、深夜勤は0時~9時くらいが一般的でしょう。
夜勤回数について法律上の上限はありませんが、看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドラインには、「夜勤回数は月8回以内を基本とし、それ以外の交代制勤務は労働時間などに応じた回数とする」と記載されています。
月平均の夜勤回数は、2交代制が4~5回、3交代制が7~8回となっていますが、それを大きく上回るケースもみられます。
夜勤負担軽減のための取り組み
夜勤については回数だけでなく、勤務間隔や労働時間など多くの課題を抱えています。
「過酷な夜勤はしたくないし、できない」という人が増えているため、夜勤が可能な職員がより多くの夜勤を担うという悪循環に陥っています。
夜勤者の確保が困難になる中、夜勤の就業者の平均年齢は43歳と上昇しており、50代などの夜勤がしんどくなる世代が、過酷な夜勤を支えているのが現状です。
このような状況を改善するべく、以下のような取り組みがなされています。
引用:看護職員の夜勤交代制の負担軽減に向けた感が協会の取り組み
夜勤は心身への悪影響があるので健康管理が重要
夜勤をする看護師の不調として多いのは、寝つきが悪い、途中で目が覚めるといった睡眠障害です。
活動時間帯に強い眠気が生じたり、集中力や気力の低下、慢性的な疲労感がみられるケースも多く、仕事のミスを引き起こす原因となりかねません。
これらは夜勤による体内時計の乱れが大きな要因になっています
看護師に限らず夜勤をする人は、がんや胃腸・心臓・血管の病気、糖尿病、精神的ストレスからうつ病などを発症しやすくなるうえ、寿命が短くなることが研究結果からも分かっています。
夜勤をしながらの規則正しい生活は難しいですが、心身への悪影響があることを認識し、しっかりと健康管理を行うことが重要です。
まとめ∶夜勤がツライときは複数の対処法をもつことが大切
50代看護師にとって夜勤はツライ業務であり、心身へのダメージも大きいです。
ツラくてもやめられない事情を抱えている人もいるので、ツライならやめようとかんたんには言えません。
だからこそツライときの対処法や、どうしても夜勤が無理になったときには異動や転職という手段があることを知っておけば、複数の選択肢ができるので安心感につながります。
50代という年齢が看護師を続けるうえでの弱みになることなく、50代がもつ強みを活かし充実した看護師生活を送っていきましょう
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